2017・No.1240
月刊保団連 5
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「道」
憲法くん、出番だよ!
松元 ヒロ
特集
心を開くコミュニケーション
一人の人間として向き合うために
 関係性を逆転する「介護民俗学」

 介護職の中にあって、六車由実さんは異色の経歴の持ち主といってもいいだろう。もとは大学の教員で、新進気鋭の民俗学者として将来を嘱望されていたが、いつしかその地位を投げ打って介護の現場で働きはじめた。ところが、 畑違いとも思われた介護の現場は意外にも「民俗学の宝庫」だったという。民俗学研究者の習性として何気なく始めた「聞き書き」は、介護士と利用者のコミュニケーションにおいて思わぬ作用をもたらし、今や六車さんが提唱する「介護民俗学」は多方面から注目されるようになっている。医療現場の医療者と患者のコミュニケーションを「介護民俗学」の視点で捉えなおすとどうなるのか? 静岡県沼津市の小規模デイサービス施設「すまいるほーむ」を訪れ、六車さんに話をうかがった。    (聞き手:編集部)

六車由実
医療現場での実践「外来診療民俗学」
萩原信宏
悪い知らせをどう伝えるのか
 ─がん診療の事例から

●患者と医療従事者との良好なコミュニケーションは生活の質や予後を改善し、クレーム、医療訴訟を減少させる。」
● 医師のコミュニケーション技術は患者、医療従事者双方にとって有用である。」
●「悪い知らせ」に関するコミュニケーションに関するプロトコールが開発されており、フレームワークごとに技術を学ぶことができる。」
●感情は「自然」と同様に考える。嵐も日を待てば良いお天気になる。早急に結果を求めず、理解、承認し、共感的に対応する。

久保田馨
セルフ・ネグレクトへの介入
 ─社会から孤立した人々にいかに対応するか

●保健師が対応する困難事例は、近年ますます多様化、複雑化している。アルコール問題や精神疾患を抱え治療を拒否する人、心身機能が低下するがサービスを受け入れない人、極端に不衛生な環境(いわゆるゴミ屋敷)に居住するが片づけを拒否する人など、支援者が対応に困難を感じる事例は多い。
●しかし実際には、本人が「困りごと」を抱えているのである。コミュニケーションをどのようにとれば相手に寄り添い、相手の困りごとに対応できるのか、「支援を求めることができない」セルフ・ネグレクトの人への対応について述べていく。

岸恵美子
身体コミュニケーションに埋め込まれている「知」
 〜認知症高齢者の食事介助を例に〜

●私たちは声と身体動作をコンマ一秒単位でやりとりしながらコミュニケーションを行っている。しかし、その実態を言語によって表すのは難しい。
●本稿では介護現場における食事介助を例にとり、職員と高齢者の緻密な相互行為を追い、従来は言葉に表しにくかった介助の技法を言語化する。対人関係をこのように言語化する試みは、今後、医療における身体コミュニケーションを捉え直すことに役立つだろう。

細馬宏通
論考 <憲法施行70年企画>
社会の発展と憲法の歴史
 ─「とうげ」を迎えた現代日本

◆憲法は、権力によって侵されることのない「人間の権利」を求める闘いの中で生み出された。自由権を核心としたブルジョア革命直後の近代憲法は、労働者・民衆の闘いによって生存権など社会権を盛り込んだ現代憲法へ発展する。いずれも権力との闘いを通じた社会発展の産物である。
◆そうした世界史の本流から見た時、日本の歴史にはどのような特徴があり、現瞬間の日本社会にはどのような可能性が広がっているのか。大胆に試論を提示してみた。

石川康宏
診療研究
高血圧症通院者100人の7年目の健康管理
─通院状況・中断背景についての検討
●高血圧受診患者100人の7年後の受診中止は35人・継続65人。35人のうち死亡18人(癌7人)、ほか紹介・転院14人、中断3人。継続者の血圧平均は126/72(140/ 90未満91%)。降圧剤数は平均1.7剤で、4剤以上の使用はなし。併用薬は平均2.4 剤。手慣れた少数の降圧剤と自己管理で降圧の効果がみられる。
●予後の背景に年齢・癌・臓器不全・認知症・生活環境がみられた。100人中、癌既往は24人であり、通院者に癌併発があり得るという視点が大切。日常診療で一人一人の「元気でよりよく生きたい」という願いを学ぶ。受診継続の中止をみることで診療の「眼と構えを養う」。
広川恵一
咀嚼機能障害による低栄養が全身に及ぼす影響
「チューイングシンドローム」の一例(1)
●患者は82歳女性、義歯の不適合を主訴に来院した。初診時口腔内所見は、重度舌炎、口角炎が診られ、薬剤性と思われる口渇で会話は水を含まないと困難な状況であった。
●咀嚼機能障害による低栄養障害、薬剤性口腔粘膜炎と診断し治療を開始した。薬の中止、義歯の作成により咀嚼機能の回復と共に全身症状が改善された症例である。
木村利明
シリーズ 心電図の生き字引
 診断の実際─18─
三原純司・関口守衛
文化
〈新連載〉逆風に抗う歌声
第1回 トランプ勝利と「ラストベルト」

■日本ではミュージシャンが政治的意見を述べると、音楽に政治を持ち込むなという声が上がる。とてもおかしな考えだと思う。欧米では芸術家や芸能人の政治的発言はごく当たり前のこと。「政治はわれわれの生活の一部だから」だ。とりわけ2001年の9・11以降、声を上げ、行動を起こすミュージシャンが目に見えて増えた。
■この連載では彼らがどのように政治に関わり、どのようなメッセージを発してきたかを紹介するが、その歴史をたどる前に、今回は2016年のアメリカ大統領選挙を振り返ってみたい。

五十嵐正
シリーズ
経営・税務誌上相談 441
開業に伴う税務上の手続き
益子良一
雇用問題Q&A 185
医療事務職員の募集に若い人から応募が来ない
曽我 浩
会員
本棚
ドクターのつぶやき川柳
〈選者〉 植竹団扇
文化・交流 各地の文化活動 ─33─
日常診療を離れ、鹿児島の魅力に触れる
鹿児島県保険医協会理事 有川公仁
VOICE
―3月号を読んで―
詰碁・詰将棋
編集後記・次号のご案内