「医の倫理」-過去・現在・未来 記録集

プレ企画のご報告

目次:

  • 京都1
  • 京都2
  • 京都3
  • 滋賀
  • 大阪
  • 兵庫1
  • 兵庫2
  • 奈良

京都1

2014年5月3日-5月6日 中国731部隊跡等を視察
〜地元テレビ、通信社、新聞が報道

保団連、京都府保険医協会などは5月3日から6日にかけて中国ハルビン市を訪問し、731部隊跡などを視察した。この模様を中国の国営テレビ・中国中央電視台(CCTV)、新華社通信、中国新聞社が報道した。
今回の視察は、2015年に京都で開かれる日本医学会総会に向けて、731部隊等を取り上げる「医の倫理-過去・現在・未来-企画実行委員会」のプレ企画の一環で、京都府保険医協会が企画した。

一行は4日、731部隊陳列館の毒ガス戦実験展示室、細菌戦実験展示室などを視察し、犠牲者の墓碑銘に献花・黙祷した。その後、当館の金成民館長らと懇談。金館長は「われわれは731部隊跡を中国と世界の平和のために保護してきた。日本の研究者もわれわれを支えてくれた。いま施設は中国の世界遺産候補に登録されている。ハルビン市から1億円の支援が出て、遺跡公園や新しい博物館を作る計画だ。今年10月には韓国のソウルで731部隊展を行う。日本でも来年シンポを計画している。当地を訪れていただき、皆さんに感謝している」と述べた。

団長の加藤擁一・保団連理事は「来年京都で日本医学会総会が開催される。われわれは総会で731部隊などを取り上げるよう懇談してきたがかなわず、独自にドイツの学者を招いて国際シンポを行う。今回の訪問はそのプレ企画だ。いま日本の安倍首相が、過去の侵略戦争を美化する靖国神社に訪問するなど、日中の政治関係はギクシャクしている。われわれ医師・歯科医師は戦争に絶対反対だ。民間レベルでの日中友好をさらに進めていきたい」と述べた。

午後にはハルビン医科大学第2付属病院を訪れ、若い医師らと懇談を行った。同病院は医師数2000人、病床数3000床の病院で、心臓移植手術では中国で一番である。日本で医学を学ぶため日本語教室があり、そこの金寧・日本語教研室講師らと懇談し、心臓内科病棟を視察した。

5日の午前は旧ハルビン警察署、旧日本総領事館や聖ソフィア教会を見学し、午後から黒竜江省社会科学院と懇談を行った。
同院の朱宇 副書記は「また保団連の皆さんに会えてとても嬉しい。大阪協会とは2001年からの交流で古い友達になっている。安倍首相が逆行的動きを進めており中日関係はギクシャクしている。しかし地元メディアのニュースで皆さんが731遺跡を見学され、戦争に反対していることを知った。医師の皆さんが731部隊のことを考えることは特別な意味がある。テレビで加藤団長が731部隊のことを日本の多くの人に知ってもらいたいと述べたことに感動した。訪中の成功を心から願っている。」と述べた。

副団長の垣田さち子・京都府保険医協会理事長は「先の戦争で731部隊が行った蛮行を深く反省している。先輩の医師達の行為にうちひしがれ、ショックを受けた。以前にも陳列館を訪れたことがあるが、当時と比べて新しい資料が展示され充実がはかられている。しかし資料の発掘など検証の仕事は本来、日本が行うべきことだと思う。金館長が中国のためでなく日本のためでもなく、世界の人々のために仕事をしていると述べたことに感動した。これからも両国の平和のための仕事をしていきたい」と述べた。

社会科学院は夕方から懇親会を開いて視察団をもてなしてくれた。視察団は中国語で「北国の春」を全員で歌い、交流を深めた。

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  • 日本軍の防毒マスク

    日本軍の防毒マスク

  • 武漢の戦闘で防毒マスクを付けた日本軍兵士

    武漢の戦闘で防毒マスクを付けた日本軍兵士

  • 生体解剖の写真

    生体解剖の写真

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京都2

2014年8月31日(日) 第1回 過去・戦争と医学

◆「15年戦争期における日本の医学犯罪」
土屋 貴志 氏(大阪市大准教授)
◆「旧日本軍遺棄毒ガス(化学兵器) チチハル被害者日中合同検診報告」
磯野 理 氏(京都民医連第二中央病院院長)

「戦争と医学」をテーマに

8月31日に開催した医の倫理ゼミ第1講には、37人の受講登録者を含む58人が参加した。マスコミからも2人が出席し、9月1日には京都新聞での報道も行われた。

講義1では「15年戦争期における日本の医学犯罪」をテーマに大阪市大准教授の土屋貴志氏が、731部隊の行った中国等での戦時下医学犯罪について講義した。この問題については、石井四郎をはじめ当事者たちが、敗戦時日本に逃げ帰るに際して証拠となるあらゆるものを爆破、焼却しているため、実証研究が極めて困難な状態にある中、公開されているアメリカ軍資料や、当事者自身が戦後発表した論文等などから検証可能な事実について整理をし、その実態に迫る話が語られた。

また、講義2では、旧日本軍が遺棄した毒ガス(化学兵器)兵器により発生したチチハルでの毒ガス被害について、被害者に対する日中合同検診を行ってきた京都民医連第二中央病院院長の磯野理氏による実態の紹介が行われた。

  • 土屋 貴志 氏

    土屋 貴志 氏

  • 磯野 理 氏

    磯野 理 氏

総合司会 医の倫理実行委員会副代表 西山勝夫
13時30分 ゼミ長あいさつ 「医の倫理」実行委員会代表 垣田さち子
<座長:京都府保険医協会理事・ハルビン視察団メンバー 宇田憲司>
13時35分 講義Ⅰ「15年戦争期における日本の医学犯罪」
講師 土屋貴志氏(大阪市大准教授)
14時35分 質疑応答
14時50分 休憩(10分) <座長:「医の倫理」実行委員会副代表 吉中丈志>
15時00分 講義Ⅱ「旧日本軍遺棄毒ガス(化学兵器)チチハル被害者 日中合同検診報告」
講師 磯野理氏(京都民医連第2中央病院院長)
16時00分 質疑応答
16時25分 第1回ゼミを終了するにあたって
「医の倫理」実行委員会副代表 西山勝夫

2014年9月28日(日) 第2回 過去・戦争と医学

◆「終末期医療をとりまく状況と死の自己決定」
川口有美子氏(ノンフィクション作家)
◆「現代版ABCC(原爆傷害調査委員会)になりかねない 東北メディカル・メガバンク機構」
山口研一郎氏(現代医療を考える会代表)

「社会と医学」で終末期考える

9月28日に開催された第2講には、38人の受講登録者を含む60人が参加した。

講義1では、「終末期医療をとりまく状況と死の自己決定」をテーマに、ALSに罹患した母親との関わりを著した「逝かない身体」で第41回(2010年)大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した川口有美子氏が、終末期医療と尊厳死問題を講義した。続く講義2では、現代医療を考える会代表で、「医の倫理」実行委員会副代表でもある山口研一郎氏が「現代版ABCC(原爆傷害調査委員会)になりかねない『東北メディカル・メガバンク機構』の危険性」について解説した。

総合司会 医の倫理実行委員会副代表 飯田哲夫
13時30分 ゼミ長あいさつ 「医の倫理」実行委員会代表 垣田さち子
13時35分 講義Ⅰ「終末期医療をとりまく状況と死の自己決定」
講師 川口有美子氏(ノンフィクション作家)
14時35分 質疑応答
15時05分 休憩(10分)
15時15分 講義Ⅱ「現代版ABCC(原爆傷害調査委員会)になりかねない東北メディカル・メガバンク機構」 講師 山口研一郎氏(現代医療を考える会代表)
16時00分 質疑応答
16時25分 第2回ゼミを終了するにあたって
「医の倫理」実行委員会副代表 飯田哲夫
  • 川口 有美子氏

    川口 有美子氏

  • 山口 研一郎 氏

    山口 研一郎 氏

2014年11月23日(日) 第3回 過去・戦争と医学

◆「『科学』を『医療』として実装するためには、何が必要なのか」
京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門准教授の八代嘉美氏

iPSと医の倫理

第3講目となる医の倫理ゼミ「未来・経済と医学」を、11月23日に開催。20人の受講登録者を含む35人が参加した。京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門准教授の八代嘉美氏が講師の「iPSと医の倫理」と題した講義では、「『科学』を『医療』として実装するためには、何が必要なのか」が主題となった。

2013年「再生医療推進法」、「再生医療安全性確保法」が成立。薬事法も「医薬品医療機器法」に改正され、いよいよ再生医療を推進するための法整備が整えられた。 しかし、それら法の中に「生命倫理」という単語は出てきても、再生医療研究における「生命倫理」とは何かという定義は出てこない。八代氏は、国が「倫理」に対する具体的なイメージを持っていないのではないかと指摘し、iPSを含む多能性幹細胞を用いた研究は、既存の医療倫理の議論に加えて、新しい「価値」の問題を惹起しており、ここをしっかり検討していかなければならないと問題提起した。

  • 八代 嘉美 氏

    八代 嘉美 氏

総合司会 京都府保険医協会理事 吉村陽
13時30分 ゼミ長あいさつ 「医の倫理」実行委員会代表 垣田さち子
13時35分 講義「iPSと医の倫理」
講師 八代嘉美氏(京都大学iPS細胞研究所上廣倫理研究部門 特定准教授)
16時25分 第3回ゼミを終了するにあたって
「医の倫理」実行委員会副代表 吉中丈志
※PDF資料をご覧いただくには、無償のAdobe Readerが必要です。

京都3

2014年10月26日 これからの日本の医学―過去・現在・未来―を語る

10月26日、京都におけるプレ企画として、スペシャル鼎談「これからの日本の医学―過去・現在・未来―を語る」を池坊学園こころホールで開催した。

医学・医療が進歩する中で医学界が医の倫理を深めていくためには、日本の倫理観、あるいは道徳観の歴史から学ぶことが必要だ。しかしながら、明治以前の倫理観、道徳観への言及は、少ないのが実情である。そこで、江戸期文化や庶民の生活などから垣間見える倫理観などを学び、現在、あるいは未来につなげていきたいと今回の取り組みを企画した。

江戸における倫理観とは

第1部は、法政大学総長の田中優子氏を講師に、「江戸から学ぶ日本の倫理」と題した講演を開催。田中氏は世相を風刺した浮世絵などを用いながら、江戸時代の人々の暮らしぶり、風俗から見える倫理観について解説した。
医療においては、江戸の人々に「養生」という考えが浸透していたことを紹介。江戸時代の本草学者、儒学者である貝原益軒の『養生訓』を引用しながら、養生は自らの健康や生活に気をつける、病後の回復に努めるという現代で使われている意味だけでなく、どう生きていくのかという人生指針も含めたものであったことを説明した。また、「好色」について、江戸時代には教養を身に付けるという意味も含まれていた価値観であり、浮世草子の作者で知られる井原西鶴の『好色一代男』を例に、当時は恋も、生命力と教養力がなければできないとして、主人公の両親が健康に育ったことを喜ぶくだりを紹介。ただ長生きするのではなく、自分の人生を楽しむためには元気でいなければならない。現代より「死」が身近にあったからこそ、自己治癒力の活性方法や病気予防法が重要視されていたとした。
井原西鶴は『世間胸算用』でビジネス論にも言及しており、悪事は必ず露見するとして、足切り八助の蛸売りを執筆している。これは商人の悪事を戒める話で、江戸期では商品を売買し、利ざやを稼ぐ商人はあまり良く見られていなかった。このことから、商売上では顧客に対してだけでなく、店組織の雇用者・被雇用者間でも「信用」に重きを置いていたことが窺い知れると述べ、現代にも通じる考えだとした。
そして、江戸文化として花開いた落語。ここには「質素倹約」といわれる簡素な生活環境や、落語の中で粗忽者、与太郎と呼ばれるような人たちも甘受し、時に直面する「死」すら笑い飛ばすという社会が描かれている。特に、江戸時代の長屋などの人間関係はおせっかいと誤解されがちだが、お互い干渉せず、尊重することが基本だった。ただし、周辺への目配りはしており、手助けが必要と判断すればすぐ駆けつけるなど、人と人との距離感が絶妙なバランスで保たれている。付きすぎず離れすぎずという「連」の思想が日常生活の中で確立していたと述べた。

江戸社会は循環社会

また、江戸時代の社会では、過去・現在・未来が線で結ばれていると考えるのではなく、螺旋のように循環するものと考えていた。実生活において、農作物の収穫や商売の利益など今よりも多く、今よりも大きくと求めるのではなく、来年も同様に生活できているようにと、循環性に重点が置かれた思考であったこと。その象徴として、江戸社会は完全なリサイクル社会だったことに触れ、着物であれば呉服屋で買い入れた後、着古せば古着屋へ。つなぎを充てるなどをしてさらに着古し、着られなくなればふとんや袋物にリサイクル。その後はぞうきんなどで使用し、どうしようもなくなったら炊き付けに使用していた。これは、現代では失われている考えではないかとした。

  • 田中優子氏

    田中優子氏

「医の倫理」スペシャル鼎談
田中氏 × 垣田氏 × 吉中氏
過去の教訓 学びいかすために

第2部は、「古都・京都で倫理を語る!」と題し、田中氏と医の倫理実行委員会から、協会の垣田理事長と吉中理事が鼎談を行った。田中氏が講演で述べた江戸の倫理観をもとに、明治、戦中・戦後、そして現在に至るまで、どのような変化があったのか。そして、医の倫理をどう考えるかをテーマに、意見交換を行った。

どう見る? 医の倫理

第1部の講演を受け、第2部の鼎談では、江戸時代の倫理観から何を学び、どう受け継いでいくべきか。また、発想の転換を求められるものは何かについて議論した。
まず吉中氏が、今日の医の倫理の根幹に位置する戦時中の医学犯罪について、医師・医学者が正面から受け止め、そこから学ぶべき教訓を、どうすれば医学界として共有できるのか。どう未来に引き継いでいくべきかが問題意識であるとし、「日本の医療界では、731部隊などの戦時下で行われた医学犯罪などはあまり語られない。率直にこの問題をどう考えるか」と投げかけた。
これに対し、田中氏は「日本の明治期にグローバリズムが本格展開し、キリスト教などの一神教の影響もうかがえるが、侵略される側の人間を“モノ”としか見ない植民地主義が拡大した。731部隊の問題もこの歴史の流れが影を落としている。医師だけに限らず、どの職業でも起こりうる問題で、このこと自体が戦争そのものを表しているのではないか」とした。

宗教観と倫理のつながり

垣田氏は「仏教は曼荼羅の中にいろいろな動物が描かれているように、命あるものは同列という考え。日本人はそうした精神を引き継いでいるはず。まして、医師は人々を病などの苦痛から救うことが使命。なのになぜ、731部隊にみられるような問題が引き起こされたのか疑問だ」とした。
「明治以降、日本人の宗教感覚でさまざまなものが失われた。このことが、もしかしたら日本人の精神性に大きな影響を与えているかもしれない。廃仏毀釈で鎮守の森や寺社を破壊し、国家神道が創られた。そして、欧州の絶対王政を真似て、日本で本格的に天皇制が確立するのは明治維新のとき。これはある意味で、一神教にかなり近かったのではないか」と田中氏。
吉中氏は「協力を要請されたすべての人が731部隊の行為を受け入れていたわけではなく、拒んだり非難した人もいた。その理由として、クリスチャンであることが挙げられている。一神教の精神世界が弊害となった部分があるという話だったが、ある側面では神と個人の関係から自身の良心に従った人たちもいる」とし、田中氏は「ある宗教、ある民族が残酷だと断じるべきではない。宗教、民族、職業であっても、そこに還元すれば、そのこと自体が差別思想につながる。“戦争”という異常な状態では、たがが外れる人間もいるということ」と述べた。

問われる“社会としての倫理”

また、吉中氏は「日本の場合、731部隊では加害者の立場であるが、広島、長崎では被害者である。反核京都医師の会が復刻した『医師たちのヒロシマ』にもあるように、必死に被爆者を救おうと動いた医師たちがいる半面、731部隊では口をつぐんでしまう。こうした二面性について、江戸時代から学べるものはなにかあるだろうか」と提起。
これに対し田中氏は「江戸に限らず、社会の中で持続可能性を追求しようとすると、えてして競争に走りがちとなる。地球環境のためのCO2排出の抑制にしても、どうしても数値の競い合いに終始してしまう。持続可能性で必要なのは、バランス。これは倫理全体の基本であり、社会の倫理ではないか。そして、個々人がどう判断しどう動くのか。あるいはどう動けるのかが、最終的に問われるのであろう」とし、垣田氏も「ずっと口をつぐんでいた731部隊の関係者が、高齢になり人生を終えようとしている現在、次々と当時のことを話し出している。70年をかけて我々がつくってきた、憲法9条を持つ、二度と戦争をしないという意識を持つ社会の中での変化のように感じ、さきほど指摘のあった“社会の倫理”というものがあるように思う」とした。

医師は人とともに生きていく仕事

次に、「現代は圧倒的なグローバリズムの時代で、医療も国際展開がキーワードとなっている。一方で、海外では日本文化は“縮みの文化”で、ここに日本文化の素晴らしさがあるが、拡大の方向に転換した際に、どうすればいいか判断できなくなり、凶暴化するのではないかという指摘がある。この評価が正しいかどうか判断できないが、どう見るべきか」と吉中氏から出された質問に対し、田中氏は「日本文化が“縮みの文化”だとは考えていない。日本人はごく小さいものでも、その中に宇宙があると考える。石庭もしかり。戦争における拡張主義は、産業革命以降の拡大志向に繋がっていると考える。そして、現代の日本は明治維新にならって行き詰まりを打開しようとしているが、この方法論は歴史的にみても誤りではないか。今の日本は自己治癒能力を高めることを考えず、とりあえず投薬のみを行っている状況にみえ、非常に危険だと考えている」。
そして、「江戸時代もそうだが、医師の仕事は治療だけでない。人と一緒に生きていく仕事だ。しかし、現代においては、人との付き合いという側面が狭まっているのでは。また一方で、なにもかも病気にしてしまっている感がある。もう一度、人と一緒に生きていく仕事として、見つめ直す必要があるのではないか」と締めくくった。

  • 田中優子氏

    田中優子氏

  • 吉中丈志氏

    吉中丈志氏

  • 垣田さち子氏

    垣田さち子氏

滋賀

医師の戦争責任を改めて問う 「戦争と医の倫理」写真展を開催

滋賀県保険医協会は2014年 12月22日、大津市・百町館和室(築120年)において、「戦争と医の倫理」写真展を開催した。

写真展は26点のパネルで歴史の一部を紹介した。これらの写真はあまり報道されることのない戦時中の731部隊による捕虜を使った人体実験の状況を、当時の資料や生存者の証言で詳しく紹介している。

戦時下とはいえ、医の倫理に反する行為に対して、私たちはこの事実に目を背けることなく、後生の人たちに伝えていく責任があると改めて痛感した。

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大阪

「日本医学会総会2015関西」のプレ企画 「731部隊の蛮行」パネル展を開催

医師、歯科医師、一般市民が来場

2014年10月23日〜25日の3日間、「医の倫理―過去・現在・未来」企画実行委員会〜「日本医学会総会2015関西」のプレ企画として『731部隊の蛮行』パネル展示会を大阪府保険医会館で行いました。

パネル展示会は、幅広く案内をしたため、医師、歯科医師、医療関係者だけでなく、各種団体関係者や一般市民などが参加し、パネル展示に熱心に見入りました。
パネルは、15年戦争中に731部隊が行った「人体実験」など史実に基づき作成したもので、構成は、「戦争中の医学者・医師が行った加害の史実」「日本の植民地における医学・医療と加害」「医学・医療の動員と抵抗」「日本の医学会(界)の戦後」「歴史の検証からこれからの医の倫理へ」の中から、適当と思われるものを54枚を展示しました。

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兵庫1

731部隊の真実と日本の戦争責任

◆「731部隊の真実と日本の戦争責任」
加藤 擁一 氏(兵庫県保険医協会副理事長、保団連ハルビン視察ツアー団長)

兵庫県保険医協会は8月23日、今年5月に行われた「保団連2014ハルビン視察ツアー―戦争と医学を考える」の報告学習会「731部隊の真実と日本の戦争責任」を協会会議室で開催し、同ツアー団長の加藤擁一副理事長が講演。会場いっぱいの会員・市民80人が参加した。

加藤先生は、今回のツアーで旧関東軍防疫水部「731部隊」の遺跡を訪ね、現地で調査・保存活動に尽力している人々と懇談した模様を多数のスライドを提示しながら報告。

731部隊はハルビンで、「マルタ」と呼ばれる中国人らの捕虜で人体実験を行い、ノミを使ったペスト菌散布など細菌兵器を開発し、実戦使用したとされる。現地では、この731部隊の遺跡を保存し、世界遺産登録を実現しようと、遺跡の整備と運動が進められていることが紹介された。

そして、731部隊の戦争責任については、GHQとの取り引きで、米国へ研究データが提供されるかわりに、石井四郎部隊長以下全員の戦争犯罪が免責され、彼らは自己批判することなく、戦後の医学界で重要なポジションを得てきたとした。

加藤先生は、ナチスドイツに協力し罪を犯したことを反省する声明を出したドイツ医師会に対し、日本医師会は反省を表明しておらず、日本の医学界は加害責任から目を背けてきたと指摘。731部隊は過去の問題では片付けられず、集団的自衛権の行使容認が閣議決定され、戦争できる国になろうとしている中、医療者が過去に犯した過ちを直視して「戦争と医の倫理」を問い直し、歴史から学ぶことが必要であると訴えた。

本企画は来年4月に京都で行われる日本医学界総会並行企画として予定されている「医の倫理―過去・現在・未来―」のプレ企画としても位置づけられ、核戦争を防止する兵庫県医師の会が共催した。

  • 加藤 擁一 氏

    加藤 擁一 氏

  • 講演風景

    講演風景

兵庫2

市民学習会
ハルビン・ヒロシマ・ナガサキ、そして福島
-医師・医学者の戦争責任・戦後責任を検証する-

兵庫県保険医協会も実行委員会に参加する、医の倫理―過去・現在・未来―実行委員会は、4月12日に京都・和順会館で開催される「医の倫理―過去・現在・未来―」のプレ企画として、市民公開学習会「ハルビン、ヒロシマ・ナガサキ、そして福島―医師・医学者の戦争責任・戦後責任を検証する―」を協会会議室で開催。郷地秀夫協会副理事長が講演し、医師・歯科医師・市民ら64人が参加した。

郷地先生は最初、福島県が実施した甲状腺エコー検査結果を示し、二次検診を必要とする子どもの割合が年度によって大きく異なっていることから、年によっては正確な検査がなされていなかった可能性があると批判。また、県が示した地域別の甲状腺がん発生数では、恣意的に地域が区分されており、市町村ごとに見た場合、福島第一原発周辺では甲状腺がん発生率が高いようにも見えると、資料を示しながら語った。

さらに、放射線による健康被害と医の倫理の問題として、広島・長崎での原爆投下について、戦後すぐに被爆地に入ったアメリカと日本の研究者は、その直後から健康への影響を過小評価する説明を繰り返してきたと批判。さらに被ばく者研究のためにアメリカが作ったABCC(原爆傷害調査委員会)は、戦後731部隊の研究者の再就職の受け皿となった予防衛生研究所と共同で、被爆者を対象とした研究を進めてきたことを紹介。医学者の倫理という戦時中から続く重大な問題から目をそらしてはならないと訴えた。

会場からは、東日本大震災後に東北メディカル・メガバンク機構が、被災者の遺伝子研究を行っていることについて、人類にとっては大きな利益になるから良いことなのではという質問が出され、それに対して郷地先生は、例え人類の利益になることであったとしても、被災者一人ひとりにていねいに研究内容について説明をし、了承を得ることが、医学研究の侵してはならない大前提であり、そのことをないがしろに進めている現状は許されないものだと回答した。

  • 郷地 秀夫 氏

    郷地 秀夫 氏

奈良

2014年7月24日(木)〜27日(日) 奈良市の戦争展で「医の倫理」を考える
パネル展示

「第21回平和のための奈良市戦争展」のなかで、「戦争と医の倫理――日本の医学者・医師の『15年戦争』への加担と責任」(2012年、「『戦争と医の倫理』の検証を進める会」作成)のパネルから抜粋した特別展示を、奈良県保険医協会と奈良民医連が協力し、実施しました。

「第21回平和のための奈良市戦争展」は、2014年7月24日(木)〜27日(日)9時〜17時、奈良市生涯学習センター・1F・ギャラリーにて入場無料で開催されました(主催:第21回平和のための奈良市戦争展実行委員会=奈良県平和委員会・他)。

同展には4日間で市民ら約500名が入場しました。

会場ではパネル集冊子も閲覧に供して、展示した抜粋パネル以外も閲覧できるようにしました。

  • 平和のための奈良市戦争展のようす

    平和のための奈良市戦争展のようす

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