次回診療報酬改定にあたっての要請書


中央社会保険医療協議会 委員 各位



 謹啓 本会は、第一線医療を担う開業保険医師、歯科医師の団体です。

 さて、政府は昨年末の来年度政府予算案の編成で、平成16年度の診療報酬を1.05%引き下げる方針を決定しました。

 ご承知のように、社会保険診療報酬は、国民医療を支える原資であり、各々の医療機関は、診療報酬収入によって医療提供を行う上で必要な、医薬品や医療材料の支払い、医療従事者の人件費、医療施設の設備の維持費などを賄っています。診療報酬本体が±0%と据え置かれたとはいえ、薬価や保険医療材料の引き下げ分が振り替えられていません。平成14年度の改定による影響は深刻です。

 この上次回改定で診療報酬を1.05%引き下げることは、医療経営をさらに悪化させ、患者の求めに応じた必要なスタッフの確保、必要な設備が整えられなくなることは必至です。その結果、診療活動に支障をきたすことは目に見えています。医療経済実態調査結果(93年から01年までの)によれば、医科診療所の看護師等従事者数は6.5人から5.6人と0.9人、歯科診療所においても5.2人から4.3人へと0.9人いずれも減少しています。

 中医協では、医療の安全と質の確保を重視した、「合理的でメリハリのついた改定をめざす」という方針と仄聞しますが、この方針の具体化を本体部分について据え置いたまま、枠内操作で行おうとすれば、矛盾をきたしかねません。

 貴台におかれましては、患者の求めに応じて全ての医療機関や医療従事者が安全、安心はもとより、必要十分な医療を提供できるよう、下記事項の実現にご尽力賜りますようここに要請します。

1、 次回改定内容の審議にあたっては、国民医療に与える影響や問題を十二分に考慮して審議をしてください。

  そのため、

(1)中医協委員だけの審議でなく、広く医療関係者、患者の意見や要望を直接聴取するなどの方法を講じて、改定による医療機関や患者への支障や問題点を縮小するようにつとめること。

(2)平成16年度からは医科臨床研修医制度が実施され、そのための必要経費を医療保険財源から拠出するとされていますが、これについては全額国庫負担とすること。

(3)新規項目導入及び重点項目評価の財源確保のために、現行給付項目の引き下げ、包括化をしないこと。

2、 改定内容について

 【医科】

(1) 外来基本料の導入をやめ、初診料、再診料、外来診療料を引き上げること。

(2) 前回改定等によって発生した不合理是正項目のうちの次の項目を是正、元に戻すこと(順不同)。

・ 手術料の施設基準(特に症例数による基準)

・ 月2回の算定とされている特定疾患療養指導料、老人慢性疾患生活指導管理料については月1回の算定に戻すこと。

・ 多剤投与の場合の処方料、処方箋料、薬剤料を減額する措置を廃止すること。

・ 消炎鎮痛等処置の回数や単位数による逓減制、算定制限を廃止すること。

(3) 医療事故、院内感染、褥創対策の減算措置をやめ、入院、入院外を問わず医療の安全、質の確保をはかれるための保障を講じること。

(4) 保険給付を制限し、患者負担を増やす特定療養費の拡大や180日超入院患者の保険給付外しをやめること。

(5) 入院時食事療養の引き下げとその部分を新に患者負担させるなどの措置を講じないこと。

(6) 診断群分類別包括評価(DPC)については、特定機能病院等の導入先における問題点や影響を十二分に検証するとともに、一般病院への拡大を行わないこと。

【歯科】

(1) かかりつけ歯科医初診料を廃止し、初診料、再診料をはじめとした基礎的技術料を引き上げるとともに、インフォームド・コンセントのための情報提供を個別に評価すること。

(2) 良質な義歯製作を困難にする補強線、困難加算等の廃止を撤回し、不採算となっている補綴関連点数を正当に評価すること。

(3) う蝕の継続管理について、小児のう蝕継続管理と同様の成功報酬や長期間の患者管理、包括評価を行わないこと。

(4) 歯科訪問診療について、「常時寝たきり状態等」と限定したり、医科通院患者への算定制限、訪問診療料の算定できない患者への訪問衛生指導の算定制限等を廃止し、新たな算定制限を設けないこと。

(5) 保険給付を制限し、患者負担を増やす特定療養費の拡大をしないこと。

             

                                謹白