医療の質、安全確保には極めて不十分

−今次診療報酬改定について−

2004年2月13日
全国保険医団体連合会
副会長 川崎美榮子


 中央社会保険医療協議会(中医協)は、2月13日、坂口厚生労働大臣から諮問された診療報酬改定案を諮問通り答申した。

 初診料の引き上げ、リハビリ、消炎鎮痛等処置の逓減制など前回改定の不合理項目の是正、長期投薬に伴う技術料の見直し、在宅患者訪問点滴注射管理指導料の新設、入院基本料における離島加算の新設、患者の他医療機関受診時の点数算定方法の改善等は、不十分ではあるが本会の基本要求項目の反映であり、医療関係者の一致した要求と運動の成果である。

 また、今後出される予定の医師標欠の届出の取り扱いについての見直しは、地域医療の確保からも当然であり、本会のこの間の運動が実ったものである。

 しかし、今次改定は、診療報酬本体±0%改定であり、国民的な課題となっている医療の質と安全を確保し国民医療を改善する見地からみて納得できるものではない。基本的技術料の引き上げにしても、前回改定の不合理是正にしても不十分と言わざるを得ない。同時に、今次改定は、公的医療保険の給付範囲と医療供給体制の双方を縮小することによって、医療制度全体の合理化をすすめる診療報酬体系見直しの「基本方針」の具体化であり、2006年に完成をめざす診療報酬体系抜本「改革」の第一歩である。

 今次改定の詳細な分析や評価は、今後出される告示や通知をみて改めて行うが、現段階での主要な特徴と問題点を指摘する。

 最大の特徴は、医療機関の機能と医療の技術を相対的に評価し医療機関格差を明確に方向づけたことである。手術の施設基準については、技術集積性と称して症例数と医師の経験年数によって加算と減算を組み合わせ、ともに基準に満たない場合は減算とするなど、あれだけ批判の強かった減算方式を残した。  

 医療機関の規模と機能によって医療機関の選別、淘汰を一層すすめ、医療供給体制を再編・合理化しようとするものと言わざるを得ない。

 第2は、公的医療費の抑制を目的とする包括点数の拡大である。

 改定では、初診料の病院、診療所の格差を縮小しつつ点数を引き上げ、外来診療料の若干の点数引き上げとひきかえに包括範囲を拡大した。200床以上病院の再診料である「外来診療料」の包括範囲を広げたことは、再診料に検査、処置、指導管理料等を包括する「外来基本料」の導入を示唆するものである。

 また、前回改定で特定機能病院に導入されたDPC(診断群分類別包括評価)を試行的とはいえ民間病院に拡大するなど、入院については、急性期、慢性期を問わず包括評価とする方向が示されている。DPC導入による患者や医療機関への影響調査、分析を徹底して行うことを求めたい。

 第3は、混合診療の実質的解禁につながる特定療養費の実質的な拡大である。

 新規項目の収載は見送られたものの、厚労大臣承認の「差額ベッド5割超」について、新たに病床過剰地域における療養病棟と有床診療所を追加し、地方社会保険事務局長の承認とするなどの要件緩和をはかっている。すでに、1月1日付で、保険収載医薬品の適応外使用の特定療養費化が実施されており、「患者の選択重視」の名のもとに特定療養費をさらに拡大している。

 中医協で俎上にのぼっていたセカンドオピニオンや特別の待合室の提供に対する特定療養費化など、今後の動向を厳しく注視する必要がある。

 診療報酬は公的医療保険制度により、患者・国民の受ける医療内容を規定する重要な制度体系である。本会は、今後とも、診療報酬の改善と患者負担の軽減を求めて医療関係者、国民とともに奮闘するものである。