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過剰投薬に関するアンケート調査結果


2010年9月22日
全国保険医団体連合会

 

長妻昭・前厚労大臣は不正、過剰医療を適正化するとして、(1)保険医療機関への指導・監査の強化で40億円、(2)レセプト点検の徹底で1,500億円の数値目標を示した。
この問題に対して全国保険医団体連合会(保団連)はインターネットを用い、過剰投薬に関するアンケート調査を実施した。また、長崎県保険医協会でFAXを用い、同じ内容でアンケート調査を行った。
保団連結果詳細 長崎県保険医協会結果詳細 両アンケート結果対比

■調査期間及び回答数:
保団連 2010年8月9日〜8月16日 回答数125名(病院10 診療所115)。
長崎県保険医協会 2010年9月8日〜14日 回答数271名(病院16 診療所255)。
アンケートにおける過剰投薬の定義:
「必ずしも医学的に必要がないのに、必要以上の投薬、処方を行うこと」の意味で、どこまでを過剰投薬とするかは個々の判断に委ねる。

■調査結果:( )内は長崎県保険医協会の結果
過剰投薬を行った経験がありますか?に対して、「しばしばある」「ある」「ごく稀にある」をあわせた回答(以下、「経験あり」)は34%(43%)で、このうちの87%(82%)が「患者さんの要望によるもの」であった。他の医師による、過剰投薬と思われる処方あるいは処方せんを見たことがありますか?に対しては、65%(63%)が「経験あり」と回答した。薬価差益については89%(89%)が「ほとんどない」あるいは「逆ザヤである」と回答した。医学的に必要で投薬、処方を行ったのに、過剰として減点・査定されたことがありますか?に対しては、75%(54%)が「経験あり」と回答した。医学的に必要であるが、減点・査定されるために、投薬、処方、あるいは、その量を制限せざるを得なかった経験がありますか?に対しては、71%(56%)が「経験あり」と回答した。
薬価差益に対する回答が示すように、薬価差益を目的とした過剰投薬は、ほとんど存在しないと判断される。しかし、患者さんの要望によるとはいえ、34%(43%)が過剰投薬の経験があると回答し、65%(63%)が他の医師による、過剰投薬と思われる処方あるいは処方せんを見たことがあると回答した事実は重く受け止めるべきであろう。
一方で、医学的に必要で投薬、処方を行ったのにもかかわらず、不当に減点・査定され、必要な投薬を控えざるを得なかった実態も浮き彫りにされた。不正な投薬と過剰投薬は全く別のものである。その現状を是正しないまま、機械的にレセプト点検の強化により医療費を削減しようとすれば、今以上に萎縮医療が拡大し、最終的な不利益は患者が被ることとなる。膨張する薬剤費を抑えるためには、まず医師自身が自らの処方を見直し、少しでも過剰な投薬をなくす努力を積み重ねる必要がある。その上で、高薬価によってもたらされている、国際的にも突出して高い日本の薬剤費比率を生み出した現在の薬価制度を、根本から見直すことが急務であると考えられる。

以上