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○政策解説「全国保険医新聞」(05年3月25日号)

障害者自立支援法案--障害者にも1割負担と食費外し狙う


 厚生労働省は2月10日、介護保険「改正」法案に続いて「障害者自立支援法案」を国会に提出した。630万人の身体障害者、知的障害者、精神障害者、障害児サービスに「自立支援給付」を行うことを定め、サービス利用に応じた応益負担(1割)の導入、食費・水光熱費等の自己負担化を狙うとともに、障害者施策をいつでも介護保険制度に統合できる仕組みに変えようとしている。

 また「自立支援医療」と称して、公費負担医療(育成・更生・精神)の1割または3割負担化等を盛り込んでいる。

 「法案」では、従来、公費負担医療と称していた精神通院医療(精神保健福祉法)、更生医療(身体障害者福祉法 18歳以上)、育成医療(児童福祉法 18歳未満)を「自立支援医療」などと呼び変え、医療費自己負担を1割とし、食費負担(標準負担額)を求める。一定所得(所得税・年30万円)以上の障害者は3割負担とする。これらについて、2005年10月施行を狙っている。

 これにより国庫負担を38億円(2005年10月〜06年2月)削減する一方で、三つの障害を合わせ180万人以上が負担増となる。

 現在5%を負担する精神通院では、負担が倍化する。人工透析など更生医療を受ける患者の半数は住民税非課税世帯に属しており、現在自己負担はないが、これが1割負担(プラス入院すれば食費負担)となる。「重度かつ継続」の範囲や月額上限は当面の緩和措置に過ぎず、2〜3年以内に見直される。

障害者福祉サービス利用を1割負担化

 これまでサービス利用は、応能負担を原則としてきたが、「法案」では自立支援給付としてサービス費の9割を支給し、1割を応益負担とする。当面の激変緩和措置として、住民税非課税世帯では月額1万5000円または2万4600円の負担上限を設定するが、一般の者は月額4万200円まで負担する。

 さらに、施設利用については、食費(人件費・材料費)・水光熱費及び個室利用を自己負担化する。通所利用は食費を自己負担化する。低所得者には、食費のうち材料費のみ自己負担とする経過措置(施行後3年間)を設けるだけである。2006年1月施行をめざしている。

 厚労省調べによれば、身体325万人、知的46万人、精神258万人と障害者は合計630万人にのぼる。これらの人々が家族も含めて、重い負担に耐えられるだろうか。重大な問題である。

介護保険制度の設計を取り込む

 「法案」は、市町村職員の聞き取り調査をもとに市町村が必要なサービスの「支給期間」「支給量」等を決定し受給者証を交付する仕組みは、現行の「障害者支援費制度」をほぼ受け継ぐとみられる。

 しかし、自立支援給付を受ける前提として市町村審査会による障害程度区分、現金支給(サービス費の9割を支給)、ケアプラン作成(相談支援事業者に委託可)、食費・水光熱費等を給付外とするなど、介護保険制度への統合を前提とした設計となっている。

 とりわけ応益負担(1割)の導入は、障害者団体から社会福祉制度の根幹を覆すものとして反対の声があがっており、医療・介護・福祉を通じた「改悪」反対の運動を広げる必要がある。