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□政策解説

なぜ保団連は歯科疾患総合指導料廃止を要求するのか

              全国保険医団体連合会
 副会長竹田正史

 全国保険医団体連合会は、6月15日に、歯科疾患総合指導料の廃止を要求し、届出・算定しない、届出取り下げ、文書提供の算定要件「通知」撤回などの要求・スローガンを掲げて「歯科医療危機打開緊急決起集会」を開く。なぜ保団連は、歯科疾患総合指導料の算定廃止を要求し、届出・算定しない、届出を取り下げる方針を掲げるのかについて解説する。

歯科疾患総合指導料は「か初診」廃止の代わりに導入

 歯科疾患総合指導料は、「か初診」廃止の代わりに「かかりつけ歯科医機能」を評価する点数として導入された。しかし、歯科疾患総合指導料は、歯科疾患継続管理診断料、歯科疾患継続指導料との三点セットで、「か初診」以上に、歯科疾患全般にわたって安上がりの長期維持管理を患者と医療機関双方の自己責任のもとに歯科医療機関に課すだけでなく、将来の歯科保険医療についての評価まで低め・歪める危険性を有している。

併算定は算定要件で禁止

 第一に、「歯科疾患総合指導料」の施設基準は、「か初診」同様「補綴物維持管理料」注1に規定する届出に加えて、「か初診」の時にはなかった、『患者の自署による同意』(別紙様式2)が付加されているし、「か初診」と同じく、他の医療機関との併算定は算定要件で禁止されている。

「補管」の考え方が全ての歯科疾患に

 第二に、「歯科疾患総合指導料」による一連の治療終了後、「歯科疾患継続診断料」による診断(「患者の自署による同意が必要」)の結果、「歯科疾患継続指導」が必要と判断して当該指導料算定期間中に発生した外傷や破折以外は急性症状など予見のできない疾病であっても、原則個別算定が認められず、安価な定額点数の「歯科疾患継続指導料」のみである。これは、いわば、「補管」の考え方(補綴物を製作、装着した2年以内には別に補綴に関する費用を算定できない)を全ての歯科疾患の維持管理に導入したものである。

混合診療の拡大で歯科保険医療費を削減

 第三に、こうして制約を強める一方で低点数に貶めながら、その経済的補填を混合診療としての保険外併用療養費制度を拡大して転嫁させ、歯科保険医療費をさらに減らそうとしている。それは「日本歯科新聞」4月4日号「歯科診療報酬改定の本質と現場の問題点」と題するインタビュー記事の中で指導医療官(匿名)が、「今回の改定は、多少の厳しさを伴うにせよ、…信頼関係が医患の間に生まれれば、自費診療の比率も上がっていくだろう。現在、混合診療の解禁に向けた動きが合わせて進んでおり、歯科医院のコミュニケーション能力の高まりが、歯科医院の収入を高める大きな要素となるもの」と述べていることにもその一端が表われていよう。

歯科疾患総合始動料等の廃止要求は至極当然

第四に、将来的には患者囲い込みで「登録医制度」や「保険医定数制」と同様の役割を担わせ、一層歯科保険医療費の縮減をねらっているといえる。

 歯科疾患総合指導料をはじめとする三点セットがこうした問題を含んでいるのであれば、「か初診」に一貫して反対し、患者の求めに応じて「保険でよい歯科医療」の提供をめざしている保団連や協会として、歯科疾患総合指導料等の廃止要求は至極当然である。

届出・算定状況で、歯科疾患総合指導料の検証が

 では、なぜ届出・算定しない、届出を取り下げる運動方針を掲げるのか。それは、歯科疾患総合指導料廃止の必要条件と考えるからである。それは次に述べる理由からである。

 第一の理由は、先の匿名指導医療官がインタビュー記事の中で「今回の改定は、2〜4年後に歯科医療を再構築するために生かすべきものだと考えている」と答えているように、このまま放置すれば、次回以降の改定で歯科疾患総合指導料をはじめとする三点セットが定着しかねないからである。

 第二の理由は、答申後初めて開かれた中央社会保険医療協議会診療報酬改定検証部会(部会長 遠藤久夫学習院大学経済学部教授)では、歯科の検証項目に、歯科疾患総合指導料等の新設項目を挙げ、その検証方法として、施設基準の届出状況や、社会医療診療行為別調査等として、「来年6月までに最終的な検証の取りまとめ」をするという方針を出しているからでもある。

 第三の理由は今次改定で「補管」が「定着」を理由に点数が引き下げられたことをみれば、歯科疾患総合指導料についても届出や算定が増大すると、点数が引き下げられかねないからである。

 こうした下では、歯科疾患総合指導料を廃止させるためには、届出しない、算定しない、届出を取り下げる運動を多くの保険医の理解と協力を得て強めることが必要と考える。