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消費税増税で倒産・失業が加速−−増税は政策的災害だ

(「全国保険医新聞」2011年6月5日号。一部変更)


景気よくなるか
  6月2日、政府の社会保障改革に関する集中検討会議で、2015年までに消費税を5%引き上げて10%にするとの政府原案が出された。また、震災からの復興に関連し、消費税を引き上げて復興財源を確保すべきとの声も出ている。他方、消費税は被災地も負担するため、消費税増税を疑問視する声もある。こうした中、増税分のすべてを被災地への復興事業・給付に回せば雇用所得が生まれ消費が増大し、全国各地の企業は被災地への販売が増え、景気は良くなるという主張がある。果たしてそうだろうか。

倒産・雇用悪化の危険
  厳しい経済状況の下、少なくない中小企業が、取引先などからの値引きにさらされ、販売価格への消費税分の上乗せが困難な結果、身銭を切って消費税を納付している。中小企業は自己負担で消費税を納付せざるを得ないために、滞納国税の半分を消費税が占める現状となっている。
  消費税を増税した場合、中小企業にとっては、被災地より受注した取引先企業などから、さらなる値引きにさらされ、身銭を一層切る結果、経営難・倒産に追い込まれ、各地で雇用が悪化することが懸念される。
  医療機関にとっては、生活負担増に伴う患者の受診抑制が進行するとともに、消費税「損税」が爆発的に増大し、経営危機に瀕しかねない。

莫大な損税が
  『帝国データバンク』(5月18日)によれば、震災関連倒産は100社を超え、阪神大震災時の2倍のペースだ。特に得意先被災による売上減少、消費自粛のあおり等による間接的な被害での倒産が87%と大部分を占めている。
  今後、沿岸部の企業の現状確認が進む中で関連倒産数の押し上げが予想され、また原発問題の収束の見通しが立たない下でレジャー・観光等のサービス関連産業の倒産数も、引き続き高水準で推移するとの見通しもある。震災の影響が全国に及ぶ中、消費税増税はこれに追い打ちをかける形となる。被災地企業にとっては、二重ローンの問題にさらなる負担が覆いかぶさる。

予算見直し、内部留保の活用を
  世論調査では、「消費税中心」での増税による復興財源の確保に賛成の回答は全体の2割に満たない。また復興のための財源確保で「予算の使い道の見直し」について86%が「不十分だ」としている(『朝日新聞』5月16日)。
  まず、国は原発の推進予算、「思いやり予算」やグアム米軍基地建設費、不要不急の大型公共事業、法人実効税率の5%引き下げ、証券優遇税制の延長などの予算・税制改正について早急に見直すべきである。
  決算期を迎え、3月決算企業の手元資金は過去最高の67兆円(20日までの集計)に膨らんでいる(『日経新聞』5月24日)。仮に、この一部を使い通常の国債の金融ルートとは別枠で、大企業や高額所得者に直接に「復興国債」を引き受けてもらえば、国債信用の低下を避ける形で財源が確保できる。ムダの見直し、内部留保などの活用での財源確保こそが必要だ。