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宮城沖縄県医師会長に聞く


容認できない普天間へのオスプレイ配備

(「全国保険医新聞」2012年8月25日号)


沖縄県医師会長の宮城氏(右)と仲里沖縄協会会長


 日米両政府は航空輸送機MV22オスプレイ機を、沖縄・普天間基地に配備する計画を進めている。沖縄では9月9日に、オスプレイ配備に反対する県民大会が開かれる。大会の実行委員を務める沖縄県医師会の宮城信雄会長に、オスプレイ配備や基地問題について話を聞いた。インタビューには普天間高校時代の3年間、宮城会長と同じクラスで共に机を並べた仲里尚実沖縄県保険医協会会長も同席。旧交を温めつつ、「オール沖縄」で県民大会を成功させようと誓い合った(聞き手・文責は編集部)。

普天間への配備は「狂気の沙汰」

―米軍のオスプレイ機が8月中にも沖縄・普天間基地に配備され、10月から本格運用されようとしています。

オスプレイ機は、今年に入ってからも重大な事故を2度も起こしています。構造的な欠陥があるとの指摘もあり、今後も絶対に事故が起きないとは言えません。「世界で一番危険な基地」と言われる普天間基地に、オスプレイのような欠陥機を配備しようというのは「狂気の沙汰」ではないかと思います。
森本敏防衛大臣が米国に赴き、オスプレイ機に試乗して「快適だった」と述べたと伝えられました。こんなパフォーマンスで安全性が確認されるはずもなく、沖縄県民、日本国民が納得するわけがありません。

――仲井眞弘多沖縄県知事は県議会で、オスプレイ機の安全性に疑問を呈し、万一事が起きたときは普天間基地全面撤去はもちろん、全基地撤去運動に波及することもあり得ると述べています。

私は、知事の発言は日本政府に対する警告と受け止めています。今度事故が起これば、地位協定どころか、日米安保条約そのものにまで言及せざるを得ないことになる。政府はそこまで覚悟ができているのかということを知事は問うていると思います。
オスプレイ配備の問題にとどまらず、最近では2004年8月の沖縄国際大学構内に米軍ヘリが墜落・炎上した事件、1995年の米兵による少女暴行事件がありました。米軍基地のために戦後、「銃剣とブルドーザー」で土地が強制的に収用されて以来、沖縄では基地があるがゆえの多くの事件、事故が起きています。
問題の根底には基地問題があり、沖縄は基地を望んではいません。県民の誰もが基地はないほうがいいと思っている。
こうした県民の思いを反映した重みのある知事の発言を、日本政府はきちんと受け止めるべきです。
9月9日には、台風で延期となっていた「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」が開かれます。すべての県民の声を結集し、日米両政府に強く訴え、成功させたいと思っています。

いまだに続く米軍の占領状態

――オスプレイの問題や基地問題をめぐる日本政府の対応をどう思いますか。

沖縄にいると、この国は完全に独立していないということがよく見えます。敗戦後の占領状態がいまだに続いているのです。
沖縄国際大学のヘリ墜落事件では、直ちに米軍の規制線が張られ、日本の警察も大学関係者も現場に立ち入ることができませんでした。日本国内でありながら、米軍がすべてを仕切った。沖縄はまだ米軍の占領下にあることを思い知らされました。
こうした経験を、沖縄の人たちはずっとしてきている。
戦後60年、沖縄の復帰から40年が経っても、日本政府が米国に言いたいことが言えないという状況は変わっていません。

基地問題は沖縄だけの問題ではない

――宮城先生は小、中、高校時代を普天間で過ごされたそうですね。

通っていた普天間中学校は、基地とフェンスとを隔てて接しており、当時からヘリコプター訓練の様子がよく見えました。
ところが先日、その普天間中学校の創立50周年式典で、私があいさつすることになり、久しぶりに母校を訪れたとき、当時と比べようもないあまりの騒音に驚きました。 マイクを使って話している間にも、ものすごい米軍機の爆音で何度か話しを中断せざるを得ませんでした。でも、聞いている人たちは、それが当たり前になっているようで、平然としている。
沖縄県外の方々には、ぜひ沖縄を訪れてほしいと思います。基地を離発着する飛行機の騒音がどれほどのものか、基地の周辺にどれだけ多くの住民が住んでいるのかを知ってもらえたらと思っています。

――本土でもオスプレイ配備反対の動きが徐々に広がっています。

オスプレイが飛ぶのは沖縄だけではありません。本土でもオスプレイの飛行訓練が計画されています。これが実現されれば、沖縄が抱える問題が全国に広がること、全国が沖縄のようになることを意味します。沖縄県民だけでなく、日本のすべての人々が米軍基地の問題を、自分自身の問題としてとらえるときに来ています。
さらに考えないといけないのは、日米安保条約の問題です。安保条約でアメリカにこの国を守ってもらうために日本は基地を提供しているが、基地はほとんど沖縄に負担させている。こうしたことが正しいのかどうかです。沖縄の基地をどうするかは、日本全体の問題だと思います。