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医療費適正化計画が「一体改革」の具体化進める


(「全国保険医新聞」2012年10月5日号)


医療費抑制策と地域 医療を方向づけ
 医療費適正化計画は1期5年間の計画で、国は医療費適正化に関する基本方針を策定し、これに基づいて各都道府県が医療費適正化計画を定める。2013年度から2017年度までの第2期計画の策定に向けて、厚生労働省は9月中に「医療費適正化に関する施策についての基本的な方針」(以下、基本方針案)を改定する。
 基本方針案では、国が一律に各都道府県の目標を示すこととはせず、国が参考となる指標・データや考え方を都道府県へ示し、都道府県が目標を設定し、計画を策定するようにする。
 2013年度から5年間の医療費抑制策と地域医療を方向づける基本方針案に対して保団連は9月21日、意見を提出したので、その要旨を紹介する。

医療・介護の長期推計で病床数大幅削減
 基本方針案は、第2期医療費適正化計画の目標として、「医療機関における入院期間の短縮を目指す」としている。
 社会保障・税「一体改革」における2025年に向けた医療・介護の再編方向は、厚生労働省の「医療・介護の長期推計」で示されている。
 一般病床については129万床が必要になるが、26万床を削減するとしている。長期療養病床は34万床が必要になるが、6万床を削減する。病床全体で202万床が必要になると推計しているが、43万床を削減し、159万床に抑制するシナリオを描いている。
 入院患者数についても、1日162万人に増加するが、病床の稼働率を高め、平均在院日数を短縮し、1日33万人、約2割の入院患者を減らすことを打ち出している。
 4月の同時改定では、医療・介護再編のレールが敷かれた。診療報酬改定では、一般病床の7対1入院基本料病棟の算定要件が、平均在院日数は18日以内、看護必要度(重症患者の入院数)15%以上にそれぞれ変更された。
 重症患者数を維持するために、比較的軽症な患者も転退院が進められるため、一般病床に空きが生じ、必然的に病床数削減は進行する。
 さらに、「13対1」と「15対1」の入院基本料を算定する一般病棟に90日を超えて入院している患者(特定患者)に適用されていた特定除外制度が外され、平均在院日数のカウントに組み込むか、療養病床の点数を算定するかいずれかの対応を迫られることとなり、長期入院患者については転退院を迫られるケースも発生する。
 都道府県医療費適正化計画で、「入院期間の短縮を目指す」ための施策が具体化されるならば、入院による医療サービスが必要な患者が、在宅医療への移行を迫られることが危惧される。

「入院から在宅へ」…医療計画で機能強化
 基本方針案は、「患者の早期の地域復帰・家庭復帰が図られることが期待される」としている。
 2013年度から2017年度までの第2期の医療計画においても、<CODE NUMTYPE=SG NUM=81FC>「在宅医療の体制構築に係る指針」に基づいて、都道府県が達成すべき「在宅死亡率」の数値目標を記載する、<CODE NUMTYPE=SG NUM=6E26>「精神疾患の医療体制構築に係る指針」では、「できる限り短期間で退院できる体制を構築する」としている。厚労省は、精神科に新たに入院する認知症患者のうち半数は2カ月以内に退院させることを数値目標とする方針である。
 在宅医療を支える主力は、在宅療養支援診療所・病院で、約7割を占める医師1人体制の在宅療養支援診療所では、緊急時の往診は、診療時間内・時間外を問わず75%が対応している。
 4月の診療報酬改定において、在宅療養支援診療所・病院を従来型と機能強化型に区別したが、機能強化型に移行できない過疎地や離島の医療機関、厚労省が示した機能強化の施設基準に基づく連携が実現困難な医療機関も多数存在する。
 従来型の評価がほとんどされていない中で、機能強化型を評価するのみでは在宅医療から撤退する医療機関が増えかねない。
 厚労省は在宅医療、在宅介護の体制を整えるため、中核となる人材を組織化して、2012年度中に全国で7000人以上の責任者を配置する計画であると報じられている。
 在宅医療における医療の安全を確保し、24時間365日のシームレスな医療・介護サービスや食事、入浴が必要だが、支える地域の崩壊が進行し、退院した患者を受け止めることが困難な状況だ。在宅医療を支える医療機関全体の底上げを図り、地域医療の基盤強化につながる施策を行うべきである。

後発医薬品シェアの 数値目標を設定
 基本方針案は、都道府県に「後発医薬品の数量シェア」の数値目標の設定を要請している。しかし、基本方針案が明記したように、「患者および医療関係者が安心して後発医薬品を使用することができるよう」にするためには、良質で安全な後発医薬品が安定供給されることが必要である。あわせて、先発品と同等の効果が得られないものもあり、患者および医療関係者の有効性に関する信頼を高め、副作用への不安を解消すべきである。

都道府県に医療提供 体制で責任負わせる
 社会保障・税「一体改革」における医療・介護の再編は、「入院から在宅へ」「医療から介護へ」「施設から住まいへ」という流れを加速し、医療・介護給付費の抑制を、提供体制の再編を通じて強化しようとしている。
 都道府県に対しては、「医療費適正化の成果が、直接、保険料に連動」することを目指し、市町村国保の運営を都道府県単位化するとともに、医療提供体制の再編について責任を負わせる方向である。
 各都道府県での第2期医療費適正化計画の策定に向けて、地域医療の現場から声を上げ、働き掛けることが重要となっている。