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生活保護改悪を許すな…指定医療機関への締め付け狙う

(『全国保険医新聞』2012年11月15日号)


2013年度予算編成において、生活保護制度の見直しが焦点となっている。一体改革の流れを反映した制度見直しの狙いを検討した。

生保への攻撃は社会保障全般の切り下げが狙い
社会保障制度改革推進法が打ち出した、生活保護の「給付水準の適正化」の方向に沿って、2012年度予算の概算要求組替え基準(2012年8月17日閣議決定)で「社会保障分野についてもこれを聖域視することなく、生活保護の見直しをはじめとして、最大限の効率化を図る」とされた。
弁護士らでつくる生活保護問題対策全国会議は声明(2012年8月22日)で、最も弱い立場にある生活保護を「いけにえ」としてたたいてみせることで歳出削減をアピールし、社会保障費全般の抑制へと舵を切り、他の制度への波及効果も狙っていると指摘している。

患者負担の導入や医療扶助の削減を検討
生活保護費は2012年度予算で3・7兆円(国費2・8兆円)。被保護者数は2012年7月現在で約212万5000人、「過去最多」と報じられた。
財務省は、生活保護費が急増しており、「制度の持続可能性に問題が生じている」として、10月22日の財政制度等審議会に来年度予算編成で生活保護費の削減を求める方針を示した。具体的には、「医療扶助への一部自己負担導入」などが挙げられている。
一方、厚労省は、概算要求で保護基準の見直しを「予算編成過程で検討する」と明記するとともに、「生活支援戦略」素案(本紙10月25日号に解説)において、「医療扶助の適正化」、「就労・自立支援の強化」、「扶養義務の適切な履行の確保」などを示している。

貧困の拡大こそが問題
たしかに、近年、生活保護費は増えている。それでも、生活保護の利用率は、人口のわずか1・6%であり、捕捉率も2〜3割と先進諸国(ドイツ64・6%、フランス91・6%)にくらべ非常に低い。
そもそも、受給者増加の背景には低年金、低賃金による貧困の拡大がある。働くことのできる層の受給増が問題視され、就労指導の強化の方向が強まっている。
しかし、受給世帯の内訳をみると、高齢世帯(44%)、障がい者・傷病者世帯(34%)、母子世帯(8%)などが全体の8割以上を占めており、いわゆる稼働世帯(その他の世帯)は全体の2割にも満たない。
その上、完全失業者数約280万人という状況の下で正規雇用が減少し、フルタイム労働でも低賃金や過酷な労働環境など、雇用破壊が進んでいる。
雇用や社会保障の改善もないままに、財政的な側面から給付抑制を行えば、必要な人がますます生活保護から遠ざけられ、人の生死に関わる。既に頻発している餓死・孤立死がそのことを如実に物語っている。
生活保護の改悪を許さない緊急の国民的な行動が必要だ。