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日医・原中前会長、「TPPでいのちと健康脅かされる」
…米議員・USTR高官らと意見交換


「TPPを考える国民会議」は4月に米国におけるTPPに関する実情調査を行い、報告書をまとめた。調査団の団長として上下両院議員、米国通商代表部(USTR)高官など関係者と意見交換した原中勝征代表世話人(前日本医師会会長)は、「TPPは公的医療保険制度を縮小し、日本の文化を破壊する」と訴える。原中氏に米国での調査の様子などについて話を聞いた(聞き手、文責は編集部)。


知られていない日本の反対世論
実情調査を通じて、米国側は、日本が全国民的合意のもとで市場開放を決断したと受け止めているというのが率直な印象です。日本国内でTPP参加に対して懸念し、反対の声があることが米側に知られていない。日本のメディアの報道がないためです。
私たちは、自民党の6項目堅守要求や衆参農林水産委員会での重要5品目の除外を求める決議、全国知事会や都道府県議会議長会の決議などの英訳を相手方に手渡し、懇談しました。
TPP推進派のある上院議員の事務所を訪問した際、「こんな資料が出ているとは知らなかった。USTRに確認する」と補佐官が血相を変える場面もありました。
米国の議会や政府の関係者に、私たちの主張や、日本のTPPをめぐる世論の状況を伝える必要があると感じました。

「例外ない」と米高官
日本は「聖域を守る」として、コメ、小麦など6品目を絶対に除外するよう主張しています。しかし、除外が可能なのかかという調査団の質問にUSTRの高官は「各国ともセンシティビティはあるが、関税撤廃の例外にするということではない」、「日本も含めTPP交渉参加国は、包括的で高い水準の協定に取り組むことをコミットしている」とコメントしました。
米国での記者会見で私は、「TPPは、2000年続くコメ中心の日本の文化、歴史を壊すものだ」ということを強調しました。『ワシントン・ポスト』(4月25日付)がこのことを報じましたが、日本では一切報道されませんでした。

いのちと健康が脅かされる
医療については、公的保険制度が影響を受け、保険適用の範囲が狭められることは必至です。知的財産保護の名目でジェネリックの開発、普及が阻まれ、薬価決定に米国の業界団体が介入してくるおそれもあります。
国民皆保険が縮小されれば、米国民間保険会社が新しい市場として乗り込んでくるでしょう。国民のいのちと健康が脅かされかねません。

参院選でTPPの是非を
TPPがどのような内容になっているか、ほんとうに大事なことが国民にはまったく伝えられていない。それなのに協定にサインするなどもってのほか。国益に反するTPP参加には反対です。
TPPに参加すれば協定に合わない国内の制度や法令は改廃を余儀なくされ、ISD条項で外国の企業が国を訴えることもできる。日本の主権がなくなるということです。先祖たちが作ってきた歴史、文化を壊す政治が行われようとしていることは、とても不幸なことではないでしょうか。
自民党は前回総選挙で、TPP反対を掲げ、「ウソをつかない」と言ったはずです。政権党になったら、野党のときと国民に対する態度が変わってしまった。参院選では、TPP参加の是非を問い直し、審判を下さなければと思っています。/

 

○TPPを考える国民会議
政府に対してTPPへの拙速な参加ではなく、真に国益にかなう経済連携を求め、国民がTPPを判断するための十分な情報を提供するために国民運動を展開している。宇沢弘文東京大学名誉教授、原中勝征前日医会長が代表世話人を務め、超党派の国会議員、有識者らが世話人に名を連ねる。4月23日から25日にかけて行われた米国でのTPPに関する実情調査の報告書は、同会議のホームページで見ることができる。