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医療・介護総合法案−医療提供体制の再編・淘汰。
患者、利用者には負担増

(「全国保険医新聞」2014年2月25日号)


極めて異例の「一括」法案
 安倍政権は、2025年度を目標年度として、医療費・介護費の抑制を前提に、医療・介護サービスの供給元の再編・淘汰を進める計画である。今国会に、第1弾として、介護保険法改定と医療法改定を一本化した「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する」法案(以下、医療・介護総合法案)を提出した。地域での医療と介護の「総合的な確保を推進する」ことを掲げている法案には、患者・利用者に医療・介護サービスの利用を制限し、負担増を強いる内容が盛り込まれた。
 政府は、昨年の臨時国会で強行した社会保障プログラム法を根拠に、医療法改定は今年10月、介護保険法改定は来年4月から順次施行する方針だが、結論とスケジュールを先取りして強行すべきではない。本来なら個別の法案として審議すべき改定案を一括した法案は極めて異例であり、国会の十分な審議を確保すべきである。

潜在的需要を加味した医療の必要量把握を
 医療提供体制の再編・淘汰をどのように進めるかというと、第1に病床数を始めとした量的コントロール、医療機能ごとにコントロールすることである。第2は地域包括ケアである。医療・介護の提供体制をネットワークで結んで地域単位のシステムを構築していく。これは市町村に責任を持たせる。3番目は、患者負担増など受診のハードルを上げ、フリーアクセスに制限をかけていくことである。
 医療提供体制の再編・淘汰への新たな方策が、地域の「医療需要」に応じた「医療の必要量」、イコール医療提供体制とのマッチングをはかるというものである。各都道府県が2025年の「医療需要」を推計し、それに応じた医療機能ごとの「医療の必要量」を示す。「地域医療構想」というもので、この策定を義務付けることが医療・介護総合法案に盛り込まれた。
 「医療需要」の項目には、入院・外来・疾患別の患者数が示されている。厚労省は、医療(レセプト、特定健診等)や介護のデータを活用する計画だが、経済的理由による受診抑制が増えている中、こうした人の「医療需要」が反映されるのか疑問だ。受診抑制や有訴率を考慮して潜在的な「医療需要」も加味した形での「医療需要」を把握すべきである。

加速する医療の営利化、市場化
 社会保障プログラム法は、社会保障改革の基本を「自助・自立の環境整備」と規定している。個別の条文では、「個人の自助努力を喚起させる仕組み」や「個人の健康管理、疾病予防」、「介護予防等の自助努力が喚起される仕組み」など、国民に対して自己責任による健康管理や疾病・介護予防を求めている。
 この法律を先取りした「健康・医療戦略」(関係閣僚申し合わせ・2013年6月)は、▽公的保険に依存しない健康寿命延伸産業の育成▽公的保険外の疾病予防、健康管理サービスの創出などを柱としている。政府の日本再興戦略は、医療・健康予防の関連市場を2020年に26兆円、30年には37兆円の規模に拡大することを目指している。さらに、ニッセイ基礎研究所は「高齢者のニーズに応える『商助』」で、「100兆円市場の『商機』獲得」を提案している。
 こうした公的保険外の医療・健康市場の拡大という「戦略」にそって、厚労省は、「国民の健康寿命が延伸する社会」と題した施策を進め、2025年度までに「医療費・介護費を5兆円規模で抑制」を目指す方針である。
社会保障プログラム法には「外来受診の適正化」が条文に盛り込まれ、医療・介護総合法案には、「国民」は「医療を適切に受けるよう努めなければならない」ことが明記された。「病床の機能分化・連携」、「外来受診の適正化」の名目で医療費抑制を進め、押し出された部分を含む営利化・市場化が加速することが懸念される。

以上