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「朝日新聞」 不正の疑いかける 「誤報」・・指導と監査を混同
「8000医療機関で不適切請求」

(「全国保険医新聞」2014年5月25日号)



『朝日新聞』は5月11日付の1、2面で「診療報酬不適切請求の疑い―厚労省、半数の調査放置―対象、8000医療機関」などと報じた。記事は指導と監査の違いを正確に理解せず、多くの医療機関に不正請求の疑いをかける「誤報」と言うべきものだ。保団連は患者・国民の信頼を崩壊させるとして、朝日新聞に懇談を申し入れた。5月18日の理事会では「保険医療機関への指導、監査に関わる正確・公正な報道を求める声明」を決議し、報道機関に送付した。

 記事は、国が毎年、診療報酬を「不適切に請求した疑い」があるとして、個別指導と呼ばれる調査対象に約8000の医療機関を選ぶが、約半数が未調査のまま放置。国民の税・保険料が投入される医療費について「行政のチェックは極めてずさん」などとしている。

指導は犯罪調査ではない

 健康保険法、指導大綱などでは、「指導」は、複雑な保険診療の取り扱いやその請求事務等の内容について懇切丁寧に周知徹底する行政指導とされている。不正請求などが疑われる場合に事実関係を調査し、保険医療機関の指定取り消しなど行政処分が可能な「監査」とは明確に区別されている。
 記事は、懇切丁寧に保険診療ルール等を教育する個別指導の位置付けを明確にしておらず、8000の医療機関が「不適切請求」を疑われているとの誤った理解を読者に与えている。

威圧的・異常な行政指導
 また記事は、医師会<CODE NUM=00A5>歯科医師会等の指定する医師等の「立会い」で、個別指導が「甘くなる」かのような元指導医療官の発言を紹介している。
 しかし、立ち会う医師は「学識経験者」として公正・公平な立場から医療上の助言をする位置付けにすぎない。
 むしろ、威圧的な言動も交えた犯罪調査のような手法が個別指導に持ち込まれて、少なくない保険医が自殺やPTSDに追い込まれてきた実態がある。
 行政指導であるにもかかわらず、保険医の人権を守るために、弁護士の帯同まで求められる実態こそが報道されるべきである。

高点数=過剰診療は誤り
 個別指導の対象選定について、レセプトが「高額で過剰診療の可能性がある」などの基準をもとに「不適切な請求」の疑いのあるものを抽出。「疑いが高い順」に全医療機関の4%(約8000)を調査対象に選ぶと記事では記載している。
 しかし、教育的な行政指導である以上、「指導大綱」は、平均点数の高いものを選定すると記すにすぎない。「高点数だから不適切ということではない」(木倉敬之保険局長、5月14日)との国会答弁にも明らかなように、高点数が過剰診療や不適切請求の疑いに直結するかのような記載は、制度を誤解している。
 むしろ、威圧的な取り調べを恐れて診療が萎縮し、医療の質が低下し患者に不利益を及ぼす事態が懸念される。

以上