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シリーズ 患者申出療養B

既存制度と違いわからない、明確な必要性ない

(「全国保険医新聞」2014年10月5日号)


 政府は、患者申出療養は現行の「評価療養」(先進医療)と同様の仕組みだと述べている。実際「評価療養」として認められた先進医療のうち、2006年度から14年度までの期間で75技術は保険適用へ移行している。
 一方で、有用性がないと判断された40技術は対象から外されている。こうした点からみても、あえて患者申出療養という新制度の創設は必要ない。
 また、患者申出療養は臨床研究中核病院と患者に身近な医療機関が患者の申し出た診療内容に応じて連携協力を図るとされる。具体的な連携協力の中身や、患者に身近な医療機関とはどういった医療機関かは不透明である。

評価療養を保険外しの受け皿に
 政府は、患者申出療養とは別に保険外併用療養費制度の拡大を進めようとしている。
 成長戦略の柱に据える国家戦略特区で、世界トップクラスの国際医療拠点において、国内未承認医薬品等の保険外併用療養の速やかな評価開始の仕組みを構築するとし、審査期間を約6カ月から概ね3カ月とする案が3月12日の中医協で了承されている。
 改訂再興戦略(6月24日)や財務省財政制度等審議会答申(5月30日)では、「評価療養」の対象を拡大する方針を掲げている。費用対効果の基準を導入し、費用対効果の低い医療技術等を保険適用せず評価療養に留め置き、逆に保険適用から外した医療技術等の“受け皿”とする方針だ。
 厚労省も同様の方針を掲げており、中医協では次期改定に向けて費用対効果の試行導入に向けた議論が開始されている(図)。恣意的運用が可能となることが懸念される。

必要な医療は 公的保険で
 日本難病疾病団体協議会(JPA)は、「審査期間をいきなり大幅に短縮することで本当に安全性、有効性が担保できるか懸念はぬぐえない。混合診療の拡大方針にかわりない」と反対の立場を示している。
 医療提供側からも反対の声が上がっている。近畿医師会連合は導入反対の決議を採択し(9月14日定時委員総会)、大阪府歯科医師会は「安全性、有効性を確実に担保するには至っていない」(6月28日代議員会決議)と強い懸念を示している。
 患者申出療養だけでなく、国の財政危機の名の下に、公的医療費削減の一環としての保険給付範囲の縮小が進められようとしていることは重大な問題である。
 保団連は、@患者申出療養の創設を撤回し、A保険適用を前提とする「評価療養」を変質させず、安全性、有効性の確認されたものは速やかに保険適用すること、B「選定療養」はこれ以上拡大しないこと―を求めて、取り組みを強める。(了)