会長:住江憲勇

本年もよろしくお願い申し上げます―2022年年頭所感

 あけましておめでとうございます。振り返ると、医療機関経営や国民の生活は、40年来の新自由主義政治・経済・財政運営による労働分配率(企業が生み出した付加価値に占める人件費の割合)の低下、雇用の破壊、所得再分配と社会保障の破壊によって既に青息吐息の状態でした。コロナ禍でさらに困難が加重されている中で迎える2022年は、この経験を生かし、二度と同じ轍を踏むことのない年にしなければなりません。

 国民生活の困難改善のために、まずは何としても新型コロナウイルス感染拡大を阻止するための諸施策、すなわちオミクロン株感染拡大させないための水際強化策、ワクチン接種3回目の徹底、検査体制拡大拡充、コロナ禍による生活困窮者への支援策、生業支援策、病床確保策、宿泊臨時医療施設拡充策が必要です。

 そして保険医の経営困難改善のためには、この20年で10%以上引き下げられている診療報酬の大幅引き上げ、感染対策を十分に取るための減収補填策や、感染拡大時の特例と補助金支援、病床確保のために地域の医療機関が役割を発揮できるだけの診療報酬上の保障が必須です。

 こうした困難打開策の必要を鑑みて、先の衆議院選挙では自民党の政策としても「分配と成長」がうたわれました。「分配のためにはまず成長」ということのようですが、新自由主義によって労働力の価値を低下させたことによる低賃金、さらに法人税・所得税の相次ぐ引き下げによる大企業・超富裕層への過剰な富の蓄積を直ちに中止し、所得再分配を十全に機能させることがまず必要です。それなくしては、国民生活や医院経営の持続可能性すらも無いという国民・保険医の合意形成が今こそ急がれます。

 選挙後、政府は「新しい資本主義実現会議」を立ち上げて緊急提言を示し、経済財政諮問会議の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」や補正予算案を閣議決定しました。しかし、どれを見ても「まずは成長戦略」という相変わらずの新自由主義政治・経済・財政運営のオンパレードで、国民と保険医の困難にどう応えるかという視点がまったく欠落しています。

 全国の保険医協会・医会、そして保団連の統一と団結で頑張りましょう。本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

(2022年年頭所感)

歯科代表:宇佐美宏

  全国保険医団体連合会は、日本国民が「いつでも、どこでも、だれでも」健康保険で安全かつ十分な診療が受けられることを目指して運動している団体です。そのことを保障するためには、診療に携わる保険医の権利と経営が守られることが前提であることは言うまでもありません。
 まず、医療運動の第一は、診療報酬の改善運動です。厚労省は、皆保険制度発足(昭和36年)以来、医科・歯科ともに低技術料政策を貫いています。そこで保団連は、診療報酬改定の度に診療報酬改善要求をまとめ、厚労省に対して度重なる要請を行い、多くの成果を着実に勝ち取ってきています。加えて、改定直後に「改定の要点と解説」を即座にまとめ、保団連、各保険医協会・医会で会員への懇切丁寧な説明会を旺盛に行っています。会員からの評価は高く、入会の動機にもつながっています。また、審査、指導、監査対策にも熱心に取り組み、指導時の録音や弁護士帯同等を勝ち取り、会員の日常診療擁護に大いに役立っています。
 次に、日本は欧米諸国と比べて患者の窓口負担が高く、経済的弱者や景気の低迷などによっては受診が抑制される傾向が指摘されています。そこで、乳幼児、児童、生徒の窓口負担の無料化運動にも取り組み、各自治体で成果を勝ち取っています。数年前から始まった「みんなでストップ!負担増」運動には、国会内集会で数多くの国会議員の共感を呼んでいます。75歳以上の高齢者の窓口負担2割化については、絶対阻止・撤回を目指して現在運動を展開中です。2割負担が施行されたら、とりわけ歯科では補綴治療に大きな影響が及ぶことは必至です。補綴に関しては、製作に携わる歯科技工士の低賃金、長時間労働が永年の課題となっています。この問題についても解決に向けて運動を強めています。根底には国の歯科医療に対する低技術料政策があることは明白であり、歯科医療費の総枠拡大運動を提起し、総力を挙げて取り組んでいます。
 今回のコロナ禍についても、減収補填や決定的に不足していた感染防具やアルコール等については、会員にできるだけ安価に提供できるような努力や工夫を各協会・医会で行っており、国の支援や対策が遅れる中、会員からは大いに感謝されています。まさに、頼れる組織となっています。