3章 国保をめぐる問題と課題










 1987年に国保の資格証明書の発行がはじまり、治療費が心配で病院にかからず、手遅れによる死亡事件が相次ぎ問題になりました。
 04年度に資格証明書を使い受診した16都道府県の被保険者のデータをもとに受診率を推計したところ、03年度の市町村国保の一般被保険者の受診率と比較すると、交付数第1位の神奈川県で30分の1、2位の福岡県で100分の1となっています。受診率が著しく低くなっていることがわかります。
 2002年の高齢者の患者負担増や2003年の健保の3割負担の実施で、高齢者をはじめ深刻な受診抑制を引き起こしています。
 国保をめぐる大きな問題の焦点は、日本の誇るべき皆保険制度が、空洞化し崩壊するという危機が目の前にせまっていることです。そして、国民のいのちや健康を守るための制度が、広範に人権侵害を引き起こしていることです。
 「制裁措置」と相次ぐ医療制度改悪によって、受診抑制が広がり、健康破壊と生活不安を引き起こしているのです。その結果、手遅れ死亡事件を引き起こし、国民の医療を受ける権利が侵害されています。










 資格証明書、短期保険証の発行は、うなぎ登りに増加しています。払いきれない保険料の滞納者が増加し、滞納者に制裁措置が行われ、全国でさまざまな人権侵害を引き起こしているのです。皆保険制度の空洞化・崩壊が国民健康保険から進行しています。また、国保を運営している自治体では、破綻寸前といわれている国保財政に四苦八苦しています。
 一方で、各県の保険医協会や地域社保協の運動などで、改善を勝ち取っているところもあります。資格証明書の発行をゼロや低く抑えるところ、減免の拡充や保険料を引き下げたところもあります。また、一部負担金の免除・減免を実施させたところもあります。