4章 混合診療-医療の構造改革-









 「保険証1枚」でかかれる医療の範囲を縮小し、「追加料金」を徴収できる範囲を拡大していけば、国民は万が一のために、公的な医療保険とは別に、その足らない分を補う民間保険に加入したり、貯蓄を増やしたりしなければならなくなります。
 最終的には、民間保険に加入していなければ、安心して医療にかかれない、ということにもなりかねません。
 このことについて国は、「国民は公的なところに助けを求めたりせず、自分の責任で健康を管理し、病気に対する備えも自助努力でやるようにしてほしい」ということをいっています。つまり、公的な保険は、あてにしないでほしいということなのです。
 国がめざす医療制度の将来像は、公的医療を縮小し、保険のきかない医療を拡大させながら、「公私2階建て」化を押しすすめ、国と大企業の負担を軽減し、企業の利益のための医療の新たな市場を創出・拡大をめざすものなのです。









 政府の医療「改革」がめざす方向は、公的医療を縮小し、保険のきかない医療を拡大しようとするものです。
 現在は、公的医療保険約30兆円のほかに、保険のきかない自費医療に約4兆円が使われているとされています。その4兆円の内訳は、薬局で買う薬代をはじめ、差額ベット代や入れ歯の一部、眼鏡・コンタクトレンズ代、鍼灸治療などです。
 先進医療や薬剤など「いわゆる『混合診療』」をいっそう拡大するとともに、医療機関の経営を営利企業に開放し、医療分野をもうけねらいの巨大な市場とすることをめざしています。一方、公的医療保険に不安を感じる中高所得者層を対象に、新しい民間医療保険商品や、医療用の貯蓄商品を開発し、大規模に普及することも考えています。
 医療・社会保障の「構造改革」とは、わが国の社会保障制度の中軸である社会保険制度を、限りなく私的保険に近づけようとするものです。「小さくて効率的な政府と民需主導の経済成長」を基本方針に、医療・社会保障における国民の「自己責任」を原則化し、社会保障に対する国の責任を放棄するものです。国の経済と財政に負担をかけない仕組みをめざし、社会保障制度を再編・縮小して、新たな市場をつくりだし、日本やアメリカなどの営利企業の参入をめざすものです。