6章 この国のかたち 世界からみると










 日本の医療や社会保障の将来を語るとき、決まっていわれるのが、「高齢化の進行で老人が増え、日本の経済が支えられなくなる」という、暗い将来像です。それは本当なのでしょうか。
 日本の「総人口」を実際に労働に従事している人数である「労働人口」で割ってみると、1人の働き手が自分を含めて約2人を扶養する、ということがわかります。この数値は、100年間大きな変化がなく、2020年も変わらないといわれています。その要因は、就労年数の上昇と女性の就労機会の増大です。
 高齢者が増えることで、負担が重くなるといわれていますが、1人が支えなければならない人数は、昔もこれからも大きく変わりません。また、「老人には子供より医療費などにお金がかかる」という意見もあります。たしかに、老人1人あたり老人医療費は、76万円かかっています。一方、子供には1人あたり学校教育費が、小学生89万円、中学生96万円、高校生109万円かかっています(文部科学省統計)。1人の労働者が、子供や老人を扶養するのにかかわる社会的な費用は、それほど差がないことがわかります。