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【政策解説】さらなる医療費抑制策2
―政府の医療改革を考える―

(全国保険医新聞2015年5月25日号より)

 

 財務省は4月27日、財政制度等審議会で、今後5年間の社会保障費の自然増を抑制し、医療・介護・年金・障害福祉など各分野の削減計画を提案した。政府が6月末に策定する「財政健全化計画」に盛り込み、年末に2020年までの「具体的な改革」の工程表を策定するとしている。財務省提案の問題点を考える。

医療費支出にキャップ

 財務省の提案は、今後5年間にわたり、社会保障費(国費)の伸びは、「高齢化による伸びの相当範囲内」に抑え込む必要がある。その財源は、「名目3%の経済成長」で得られる税収増500億円の範囲内とするという内容だ。
 つまり、社会保障費の伸びに毎年5000億円というキャップをかけて抑制するということだ。
 政府の経済財政諮問会議でも民間議員が「増加を高齢化要因の範囲内に抑制すべき」だと主張した。
 社会保障費は、高齢化や医療の高度化に伴って当然増加する。自然増分は年間8000億円から1兆円と見込まれている(2015年度予算の「基本方針」では自然増は8300億円としている。前年度予算比での増加は1兆30億円)。仮に自然増を5000億円程度に抑え込むには、3000億円〜5000億円規模で毎年削減しなければならない。

小泉改革を上回る

 かつて小泉内閣が社会保障費の自然増を毎年2200億円削減したことによって、「医療崩壊」が深刻化した。これを上回る規模で、社会保障費の自然増にキャップをかけて、給付抑制・負担増を進めるならば、地域住民の生活を支える基本インフラである医療・介護の崩壊がいっそう進むおそれがある。

財務省が提案した医療、介護分野の改革

保険給付の範囲縮小

受診時に1〜3割の窓口負担に追加して、一定額を負担(1案:定額を常に保険免責にする、2案:月額上限(高額療養費)に達するまで受診時に定額負担)

特許切れ先発品の保険給付は後発品を上限とし、先発品を選んだ患者は、後発品との価格差を1〜3割の窓口負担に追加して負担

市販品類似薬の湿布、漢方薬、目薬、ビタミン剤、うがい薬は、完全に保険から外す

すべての入院病床で入院時の居住費(月1万円程度)を負担

要支援と要介護1、2を対象としたサービスすべてを市町村が予算範囲内で行う事業に押し付け

負担の公平化

75歳以上高齢者の窓口負担を1割から2割に引き上げ(新たに 75歳になった 者、既に75歳の者は段階的に引き上げ)

70歳以上高齢者の現役並み所得者(3割負担)の対象拡大(マイナンバーにより 金融資産を勘案)

70歳以上の高額療養費の月額上限の特例を廃止し、負担上限額を引き上げる

介護保険の2割負担の対象者を拡大(マイナンバーにより金融資産を勘案)、利用者の負担限度額を引き上げ

医療の効率化、サービス単価の抑制

外来医療費の適正化、国が外来医療費の算定方式(ガイドライン)を策定・提示 する

地域医療構想と整合的な診療報酬点数の付与(病床機能の算定要件の厳格化)

慢性期病床の人員配置基準と報酬単価を老人保健施設などと整合的なもの にしていく

高齢者確保法 14条(都道府県単位の診療報酬設定)の運用基準の明確化

都道府県の勧告に従わない病院の報酬単価の減額

都道府県の権限強化、民間医療機関に対する他施設への転換命令など

診療報酬本体と介護報酬をマイナス改定

保険給付の範囲縮小ができない場合は、サービス単価(診療報酬本体・薬価・介 護報酬)をさらに大幅に抑制

受診・投薬が少ない加入者の「保険料の傾斜」(支援)を行う

※記述に誤りがあったため、修正しました

以上