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医療事故調査制度のポイント A「院内事故調査など」
―責任追及のためではない―

(全国保険医新聞2015年7月15日号より)

 

 10月から実施の医療事故調査制度について、法令・通知(平成27年5月8日医政発0508第1号)をもとにポイントを解説する。今回は管理者が「医療事故」と判断した後に管理者が行うべきことについて。

 医療機関で発生した死亡事例を、管理者が「医療事故」と判断した場合(7月5日号のポイント@参照)には、制度上、まず遺族への説明と医療事故調査・支援センター(センター)への「報告」(図中@)を行った上、医療事故調査(院内事故調査)を実施する。

医療事故調査制度の概要

医療事故調査制度の概要

■遺族への説明とセンターへの「報告」

 遺族には医療事故の発生した日時、場所、状況、事故調査制度の概要、事故調査の実施計画、解剖や死亡時画像診断(Ai)に必要な同意取得のための事項等を分かりやすく説明する。遺族への説明の後、「遅滞なく」一定の事項を書面またはウェブ上のシステムを用いてセンターに報告する。報告事項は、医療事故の日時、場所、状況のほか、医療機関の情報、患者情報、院内事故調査の実施計画の概要などである。「遅滞なく」とは正当な理由なく漫然と遅延することは許されないとの趣旨である。

■調査の目的は医療安全の確保

 院内事故調査はセンターへの報告の後「速やかに」行う。カルテ等の記録の確認、当該医療従事者や関係者のヒアリング、解剖・Aiの実施、医薬品や医療機器、設備等の確認、血液・尿等の検査―といった事項について、必要な範囲内で管理者が選択し、情報の収集・整理を行う。
 重要なのは通知にも明記されているように、医療事故調査制度の目的は、医療安全の確保であり、個人の責任を追及するためのものではないことである。また、医療事故に関わった従事者が不利益を被らないよう、調査は当該従事者を除外せずに行い、匿名性の確保に配慮することが求められている。ヒアリング結果は原則として外部に開示できない。
 医療事故調査は、医療法で医療事故の「原因を明らかにするために必要な調査」と定義された。もっとも、調査によって必ずしも原因は明らかになるとは限らない。また、調査の結果、必ずしも再発防止策を得られるものではない。通知ではこれらのことに留意する旨明記されている。

以上