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地域医療構想「あくまで自主的な取組」
―病床削減推計に厚労省が応答―

(全国保険医新聞2015年7月15日号より)

 

 都道府県では地域医療構想の策定が進んでいる。団塊の世代が75歳になる2025年に向けた医療への需要(ニーズ)を見据えて地域の病床機能を再編する。社会保障費抑制の圧力が強まる中、病床削減につながることが懸念される。厚労省は同構想は「自主的な取組が基本」であり、病床削減を強制するものではないとする見方を示した。社会保障費抑制の具体化を許さないために、地域の取り組みが重要性を増している。

現場に懸念

 6月15日、政府の専門調査会が、地域医療構想策定のガイドラインが示す計算方法に基づいて、2025年の必要病床数の都道府県別推計を発表。
 41道府県では病床削減となる見通しを示した。
 推計値の公表は、医療関係者に懸念を呼んだ。
 日本医師会の横倉義武会長は6月17日の定例会見で、「医療関係者の多くは納得できないという思い」と話し、同構想について「構想区域内で必要な病床を手当てする仕組み」だと述べた(メディファクス6月18日付)。また、病床機能再編に関する都道府県知事の権限について、「行き過ぎた強制力の発揮は、地域医療にひずみを生じさせる」と指摘している。
 全国保険医団体連合会は、推計値の公表が地域の実情を否定した病床削減につながる懸念を指摘した(本紙7月5日号)。

病床削減、知事の権限を否定

 懸念に応える形で厚労省は6月18日、専門調査会の試算について、「○○床削減しなければならない」といった誤った理解とならないよう注意を促す文書を都道府県に発出した。同文書では推計値は「参考としての位置づけである」と指摘。地域医療構想は「あくまでも自主的な取組が基本」と強調している。病床機能再編に関する都道府県知事の対応についても、「稼働している病床を削減させるような権限は存在しない」と釘を刺した。

抑制を具体化させない

 安倍内閣が閣議決定した「骨太の方針」では同構想を医療費抑制に利用する方針が示された。保団連の三浦清春副会長・政策部長は7月3日、社会保障費抑制の具体化を許さない取り組みを強めるとする談話を発表した。構想を充実させる「自主的な取組」を通じて、医療費抑制策に歯止めを掛けることもその一つだ。医療関係者や患者・住民の要求を反映させる要請が重要だ。
 18年度からは、国保の財政運営が都道府県に移される。都道府県は地域の医療提供体制と医療保険の両面から責任を果たす仕組みになる。
 地域医療の充実のために、国保の一般会計繰入継続など、自治体への働き掛けの重要性が増している。

以上