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【政策解説】大規模医療費削減を具体化
―診療報酬本体マイナス打ち出し

(全国保険医新聞2015年9月5日号より)

 

 政府は「骨太の方針」で示した社会保障費削減の提案に基づいて来年度予算の概算要求に向けた基本方針を示した。厚労省も政府方針と連動する形で政策提案した。政府の医療政策の方向性を検討する。

自然増分削減3000億超

 閣議で了解した2016年度予算の概算要求に向けた基本方針は、社会保障費の「自然増分」は上限を6700億円とした。15年度と比べると1600億円も減っている。さらに、年末の予算編成に向けて「合理化・効率化に最大限取り組み」、その結果を2016年度の「予算に反映させる」考えを示した。
 概算要求の段階で「自然増分」を前年度比で1600億円減の6700億円に圧縮し、予算編成の段階で「高齢化による増加分」(5000億円程度)までを「目安」に1700億円程度を削り込み、合わせて3300億円程度の「自然増分」削減が狙われている。
 今後、経済財政諮問会議に直結する「経済・財政一体改革推進委員会(会長:新波剛史・サントリーHLD社長)」で、「社会保障」、「非社会保障」、「制度・地方行財政」の3つのワーキング・グループを設置し、検討を進める。10月中旬には中間的な報告を取りまとめ、年内に「改革工程表」を策定する方針である。

国民皆保険は「自助を基本」

 閣議決定した「骨太方針2015」は、「自助を基本に公助・共助を適切に組み合わせた持続可能な国民皆保険」を掲げ、「検討課題」として、@さらなる患者負担増、保険給付の削減、A「地域差解消」の名による医療費抑制路線の強化、B介護保険の給付削減、C「公的保険外サービスの産業化」など医療・介護の具体的な削減策を挙げた。
 財務省の財政制度等審議会は、薬価引き下げ財源の診療報酬本体への振り替えを否定し、診療報酬本体のマイナス改定を打ち出しており、3300億円の削減規模から考えると2016年度診療報酬改定が焦点になるのは必至だ。

厚労省が具体化検討

 厚生労働省は8月6日、「保健医療2035策定懇談会」が6月に策定した提言書の実現に向けた推進本部を設置。村木厚子事務次官を本部長とし、同省幹部で構成する。10〜20年後の保健医療政策ビジョンの提言について、省内の関係部局が実現の可能性を整理する。
 優先的に検討する5つの施策(「総合的な診療を行うかかりつけ医の普及・確立」、「患者の価値やアウトカムを考慮した診療報酬体系・インセンティブの設定」など)について、関係部局による「検討チーム」を設け、9月を目途に方向性をまとめる。
 「骨太方針2015」に盛り込まれた「検討課題」と連携する形で、保健医療分野の具体的施策の検討を進めるものだ。

骨太方針の検討課題・保健医療2035の提言 社会保障財源はある―保団連の提案

以上