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病床のさらなる絞り込みへ―2016年診療報酬改定の議論進む

(全国保険医新聞2015年9月5日号より)

 

 6月、政府の専門調査会は「地域医療構想策定ガイドライン」を参考に、2025年の必要病床数は現在の約135万床から115〜119万床に削減し、新たに30万人以上は在宅で対応するとの推計結果を公表した。16年改定は、推計結果も受けて、都道府県で病床の転換・削減が着実に進むよう政策的に誘導する位置付けとなる。16年改定(医科)に向けた中医協の議論と焦点を解説した。

救急、認知症等に対応―急性期

 14年改定より1年で、7対1看護病床(一般病棟)は38万床から36.4万床と減少したが、患者像をより明確にしてさらに絞り込む。
 対象患者の指標となる「重症度、医療・看護必要度」について、より急性期にふさわしい患者増を反映する指標に見直す方針だ。現在、必要度は患者の重症度(A:7項目)と看護上の手間(B:7項目)からなり、7対1看護病床ではAが2点以上でBが3点以上の患者が入院患者の15%以上とされている。
 手術直後や救急搬送後の患者、無菌治療室での管理など明らかに急性期医療を必要とする患者が基準に反映されるよう、A項目単独で重症者割合を満たせる基準を追加する方向だ。B項目は、一般病棟、HCU、ICU間で統一、簡素化した上で、HCU用の認知症対応の項目を組み込む案を検討する。項目再編、基準追加とともに、15%以上の基準引き上げも予想される。認知症やせん妄の患者の増大など医師、看護師等の過重労働の深刻化が懸念される。

多様化、リハビリ強化―回復期

 回復期は、急性期からの転換等も視野にテコ入れする。
 地域包括ケア病棟は4月現在3.2万床だ。60日間の算定制限、 在宅復帰率7割以上、在宅以外は原則包括評価などの要件から、骨折・外傷のリハビリ目的、要介護度や認知症等介護上の課題が少ないなど退院見通しがつきやすい高齢入院患者が多い状況にある。
 病態がより複雑な状態、在宅復帰が困難な患者、自宅・施設からの緊急時の受け入れなど多様な役割が担えるよう、手術・麻酔は出来高にする案を検討する。
 回復期リハビリ病棟は、より重症な患者のADL向上などリハビリ機能のさらなる発揮を進めて、急性期リハや地域包括ケア病棟との違いを明確にしていく。

重度者に厳格化、報酬減も―慢性期

 慢性期は、より医療依存度の高い患者に絞り込む。療養病床は、現在、入院基本料1(看護配置20対1以上)は医療区分2・3の患者が8割以上とされるが、入院基本料2(同25対1以上)にも区分2または3の患者割合を設定する方向だ。中医協資料では6割前後と推測される。
 医療区分の評価項目では、褥瘡(区分2)は入院中に生じたもの除く。うつ状態(区分2)、頻回の血糖検査(区分2)、酸素療法(区分3)は「看護師の定時観察」で対応可能とされる者は施設・在宅での対応を促す。施設・在宅で看護師の毎日の観察が確保されるのか疑問の声も聞かれる。56疾病78万人から306疾病150万人へ大幅に増大する指定難病への対応も検討課題だ。
 ガイドラインは医療区分1の患者の70%は在宅対応を求めている。財務省の「建議」でも、入院基本料2は報酬水準等を老健施設並み(現行より3〜4割減)にするよう求めており、入院基本料の引き下げも焦点になる可能性が高い(続く)。

2016年診療報酬改定をめぐる主な検討課題(入院)

以上