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【政策解説】マイナンバーが施行
―地域医療をどう変えるA―

(全国保険医新聞2015年10月15日号より)

 

 閣議決定した「日本再興戦略2015」には、マイナンバー制度のインフラを利用して、医療情報を電子データ化し、民間利用していく方針が盛り込まれた。このために必要なのが「個人番号カード」だ。政府は来年1月から3カ月間で1000万人へ普及させる方針で、自民党内では全国民の3分の2に当たる8700万人へ普及させるという目標も出ている。地域医療へどのような影響を及ぼすのか解説した。

健康保険証との一体化狙う

 「日本再興戦略改訂2015」は、2017年7月以降早期に医療保険のオンライン資格確認システムを整備し、このインフラも活用して、個人番号カードと被保険者証を一体化させる方針を打ち出した。自民党IT戦略特命委員長の平井卓也衆議院議員は、「18年には健康保険証と番号カードを一体できるよう調整が進んでいる。(中略)これが実現すれば、番号カードは劇的に普及するとみている」とその狙いを語っている(『週刊ダイヤモンド』15年7月18日)。
 政府内では、個人番号カードに医師・歯科医師の免許、運転免許、クレジットカードなどあらゆる機能を持たせる「ワンカード化」が検討されているが、情報の集約が広がるほど漏えいした際の被害は甚大になる。

設備費用を医療機関が負担も

 患者は保険医療機関・薬局に受診する際、被保険者証の提示は不要で、代わりに個人番号カードを提示する。
▽保険医療機関・薬局の窓口で職員が、個人番号カードの写真と照合して患者本人の確認を行う。
▽職員が個人番号カードにあるICチップから「電子証明書」をICカードリーダーなどによって機械的に読み取る。
▽医療保険の資格情報を管理する支払基金・国保中央会に対し、当該患者の電子証明書に対応する医療保険の資格情報を要求する、資格情報の要求にはレセプト請求専用回線を利用する。
▽支払基金・国保中央会は、当該患者について、「公的個人認証サービス」(オンラインで行政手続きを行う際に本人確認の手段として利用されているサービスで、地方公共団体システム機構が実施している)を利用し、電子証明書によって本人確認の照会をかける。
▽公的個人認証サービスから回答された結果を保険医療機関・薬局に通知する。
 保険医療機関・薬局は、個人番号カードを使う場合、読み取り用のICカードリーダー、バーコードリーダーを設置しなければならない。レセプト専用の回線の設定変更も必要となる。これらの設備費用は保険医療機関・薬局の負担となる見通しだ。

三師会が共同で反対声明

 保険医療機関が呼び出した資格情報は、電子カルテやレセプト専用のコンピューターに自動入力されるシステムが想定されるので、電子カルテとレセプト専用コンピューターがインターネット回線と接続した状態になると見られる。個人の医療等情報の収集・連携・共有を可能とするインフラが構築されることになる。
こうした動きに対して、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三団体は14年11月、個人番号カードと被保険者証の一体化に反対する共同声明を発表した。
さらに、日本医師会の「医療分野等ID導入に関する検討委員会」は今年7月、「個人番号カードを保険証そのものとすることは、券面のあり方の問題、全医療機関のIT環境整備の問題、その整備に伴う現場の混乱等から困難と考えられる」と表明し、警鐘を鳴らしていることは注視すべきである。

図 医療保険のオンライン資格確認の仕組み(イメージ)

以上