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【2016参院選】沖縄こそ安保法制の現場
― 琉球新報記者 新垣 毅 ―

全国保険医新聞2016年6月25日号より)

 

 来月の参院選では、沖縄県名護市辺野古の基地建設も争点の一つだ。琉球新報記者の新垣毅氏に、沖縄の実態を寄せてもらった。

 また起きてしまった―。今年4月、沖縄県うるま市に住む20歳の女性が暴行、殺害され、遺棄されるという無残な事件が発生した。米軍嘉手納基地で働く元海兵隊員の軍属が殺人・強姦致死・死体遺棄の容疑で逮捕された。1972年に沖縄が日本に復帰して以降、最悪の事件と言えよう。
 復帰以降、2013年までの間に、米軍人・軍属・家族の刑法犯は5,833件に上る。うち殺人・強盗・放火・暴行の凶悪犯は570件もある。在日米軍専用施設の約74%が沖縄に集中しているがゆえに事件が繰り返されている。
 今回の事件を重く見た沖縄県議会は在沖米海兵隊の撤去などを日米政府に求める意見書を全会一致で可決した。県議会が在沖米海兵隊の撤退要求に踏み込むのは初めてだ。在沖米軍で海兵隊は施設面積の約75%を占める。軍人数の約60%に達し、海兵隊による事件・事故の発生件数も多く、米軍基地負担で大きなウェートを占めてきた。海兵隊撤退要求は沖縄の基地や兵士の大半を撤去せよと言っているのに等しい。
 しかし日米政府は冷淡だ。沖縄の要求に応えず、抜本策を示せていない。沖縄側は日米地位協定の改定も求めているが、運用改善の範囲内で対処する方向だ。日米政府の対応は沖縄にとってゼロ回答≠セ。
 こうした姿勢を反映してか、6月5日の県議選では翁長雄志知事を支援する県政与党が躍進し、安定過半数を維持する結果が出た。7月10日の参院選でも、名護市辺野古への新基地建設問題など基地問題が鋭く問われることになる。
 沖縄の民意を無視して進められようとしている新基地建設を阻止する闘いは、全国的に見ても、いろんな象徴的意味がある。一言で言えば「誰が主役(=主権者)か」という問題だ。


基地のありかた問われる

  一内閣の憲法解釈変更で集団的自衛権の行使が容認されたことに対し、立憲主義の危機が強く叫ばれた。多くの反対の世論がある中で成立した安保法制についても、批判が強い。このプロセスを見れば、主権者である国民がないがしろにされていると言われても仕方がないだろう。日本国民は主権を取り戻すという課題に直面している。
 辺野古新基地建設の阻止は、安保法制の中身を骨抜きにするという側面もある。昨年8月にうるま市沖で墜落した米軍ヘリに搭乗した自衛隊員がけがをした事故が物語るように、米軍と自衛隊の一体化が進んでいる。安保法制を先取りしたような事故だった。安保の現場はまさに沖縄で起きている。新基地建設阻止の行動は、一体化する米軍と自衛隊の軍事的機能を止める象徴的意味を持つ。すなわち、日本の平和の在り方にも関わるのだ。
 参院選沖縄選挙区は、この辺野古新基地建設の是非が最大の争点になるだろう。今回の事件への抜本的対策、大幅削減など基地のありようも根本的に問われることになる。
 一方でこの選挙は、国土面積のわずか0.6%しかない沖縄に、米軍専用施設の約74%を押し付けている差別状態が、日本国民に問われる。すなわち、沖縄に基地を押し付け続けている日本人(ヤマトンチュ)が沖縄を差別し続けるのか、やめるのかが、試されるのである。

以上