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【生活相談ダイアリー】受診の遅れで末期がんに

全国保険医新聞2017年3月25日号より)

 

 政府は患者負担増計画の議論を進めているが、患者・国民の生活はどうなっているのか。生活困難者などを支援するNPO法人ほっとプラス(※)に寄せられた相談の事例を紹介し、実態を探る(月1回掲載)。

今回は河川敷でホームレス生活をしていたBさん(60代男性)の事例を紹介する。

 

河川敷でのホームレス生活

 ホームレス支援を行う別団体からの依頼で支援を行ったBさん。中学卒業後、建築現場で働き続けてきたものの、高齢からくる体力の衰えもあり仕事ができず収入が途絶えてしまう。役所に生活の相談に行ったが、紹介された施設は環境が劣悪で飛び出してきてしまい、河川敷でホームレス生活をしていた。しばらく河川敷で生活をしていたが、腰の痛みや体力的な不安を抱え生活に限界を感じている状態であり、支援に携わることとなった。

 

腰痛の悪化だと思っていたら…

 当法人が管理するアパートに入居してもらい、生活保護等の福祉サービスを活用しながら生活していたものの、入居後数カ月して以前にも増した腰の痛みを訴えるようになった。まずは病院への受診を促し整形外科を受診し、骨粗しょう症という診断を受け、服薬やリハビリ等で悪化しないようにADLを維持していくこととなった。だが、Bさんの腰の痛みは日に日に悪化する一方で、買い物や入浴さえも困難な状況になってしまう。ついに限界が来て、救急車を呼び、同行して総合病院へ行ったところ、そこで受けた診断結果は末期のがん。腰の痛みはがんの転移が原因だったことが分かった。

 

入院4カ月後に死亡

 すでに手術は難しい段階となっており、完治は厳しい状況であった。入院してから約4カ月後、残念ながら亡くなってしまったが、亡くなる数日前に数十年疎遠になっていた家族にも会うことができ、河川敷での孤立死ではなく、病院で安らかに最期を迎えることができた。

 

年金生活者の受診控え多く

 Bさんの事例のように我慢に我慢を重ねて医療の必要性を感じるときにはすでに重篤化しているというケースは多く見受けられる。生活保護受給者は生活保護の医療扶助によって医療的なケアが保障されるが、特に年金のみで老後の生活している人が医療費の負担を考え受診控えをしてしまっていることが多いように感じる。高額療養費制度や無料低額診療等、医療費の負担を軽減する制度をスムーズに活用し、重篤化する前の早期発見・早期治療を行うことが貧困対策の一助になるだろう。

(特定非営利活動法人ほっとプラス事務局次長 平田真基)

ほっとプラス 社会福祉士などが生活活困難やホームレス状態にある人々の相談支援活動をするNPO法人。ベストセラーとなった『下流老人』著者の藤田孝典氏が代表理事を務める。

以上