ホームニュースリリース・保団連の活動医療ニュース 目次

 

受診ためらわせる
―医療機関に政府広報―

全国保険医新聞2017年9月25日号より)

 

各医療機関に配布されている「政府広報」。
高齢者に負担増を「お願い」している。

 

 政府は今年度から段階的に施行されている後期高齢者の保険料軽減特例、70歳以上の高額療養費の見直しについて、医療機関等に政府広報を送付した。「どう変わった?高齢者の医療費と保険料」と題して、この間実施された後期高齢者保険料や自己負担上限額の引き上げの趣旨、内容を医療機関等を通じて高齢者に周知するのが狙い。「公平な負担」を強調して今までの高齢者の負担が低すぎたという印象を与え、さらなる負担増も示唆する。患者さんを不安にし、受診抑制にもつながる内容だ。

 

 4月から後期高齢者の保険料引き上げでは、所得の低い人を対象に2020年までに1.5倍以上、中には10倍以上の引き上げとなる人もいる。
 年収約153万円から211万円までの人の所得割は特例廃止で5割から8割となり、1.6倍になる。月額で最大約1,320円(全国平均)の増額。また健康保険被保険者の被扶養家族であったの人の均等割も、同じく特例廃止で1割から3割と3倍になる。
 「政府広報」では、高齢者の高額療養費は、「自己負担は、ごく一部」で、医療費の大半は保険料や税金で賄われていると説明。ひと月の医療費が100万円だった場合を挙げ、事例としている年収200万円以上の人が支払っていた制度見直し前の自己負担額4万4,000円が低すぎたとの印象を与える。
 さらに「平成30年度も『所得に応じた保険料の引上げ』『自己負担の上限額の引上げ』をお願いする予定」と、患者さんを不安にさせ、受診をためらわせる予告も入れている。「誰もが安心して医療を受けられる社会を維持する」と言うが、医療を受けられない人を生み出しては本末転倒だ。

 

高齢者の負担は限界

 高齢者の保険料や医療費自己負担は、決して低いとはいえない。平均的な高齢者の家計は収入約21万円に対し、支出は約26万円。貯金を取り崩して生活している高齢者が多いのが現状だ。また75歳以上の9割近くが外来で何らかの慢性疾患を治療、6割以上が複数の慢性疾患の治療をしている。医療機関にかかる機会の多い高齢者の負担は限界にきている。

 

社会保障全体の充実を

 「政府広報」は、高齢者の負担増は世代間や同じ高齢者間での「公平を図る」ためと説明している。しかし実態は、重い方に負担を揃え、社会保障費を抑制する狙いだ。
 安倍政権は衆院解散・総選挙に向けて「高齢者向け給付が中心となっている社会保障制度」を「改革」するなどと打ち出している。しかし日本の社会保障予算全体が少ないため高齢者手当てが手厚く見えるに過ぎず、社会保障全体を充実させることが必要だ。
 保団連では医療機関の待合室で、日本の医療のあり方を患者さんと共に考えるツールとしてクイズハガキを作成(「待合室キャンペーン」より)。真に「誰もが安心して医療を受けられる社会」にするために、各医療機関での活用を呼び掛けている。

以上