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大企業の内部留保400兆円超
―財務相も溜め込み批判「世間が納得するか」―

全国保険医新聞2017年9月25日号より)

 

 

 財務省が9月1日に発表した2016年度法人企業統計の発表を受け、各種報道は企業の利益の蓄積である内部留保が400兆円を超えたと報じた。資本金10億円以上の大企業では403.4兆円に上る。他方で、労働分配率(事業活動を通じて生み出された付加価値に対する賃金等の人件費の割合)は低下。勤労者の賃金が低迷する一方、大企業が利益を溜め込んでいる歪んだ実態が浮き彫りになった。

 

安倍政権の下で約70兆円増

 一口に内部留保といっても、集計の仕方によって数字は異なる。財務省の統計で、全産業の利益剰余金は460.6兆円。会計方式の異なる金融・保険業を除いた全産業の利益剰余金は406.2兆円となる。
 特に大企業がどれだけ利益を溜め込んでいるかに着目してみると、財務省統計で上位第1区分となる資本金10億円以上の全産業(5515社)を対象にし、利益剰余金のほか資本剰余金、引当金など企業の利益から株主への配当を除いた企業内に留保された額を含めて計算すると403.4兆円となる。安倍政権が発足した2012年度から69.6兆円増加している。

 

賃金はマイナス雇用改善が必要

 他方で、勤労者の賃金は低く抑えられたままだ。財務省統計では賃金は3.6%増となったが、物価上昇分を差し引けば実質の賃金は下落。『日経』9月4日付は、16年4〜6月期の労働分配率は資本金10億円以上の大企業で43.5%で、「46年ぶりの水準」と報じた。
 企業の内部留保が膨れ上がっている理由として「経済の先行きが見通せない」「将来不安」などが上げられている。しかし、麻生財務大臣ですら「法人税を下げて内部留保が増えて世間が納得するだろうか」(『日経』7月22日付)と財界のセミナーで発言するなど、過度な「溜め込み」への批判が出ている。
 日本経済の停滞は雇用と賃金の低迷が要因だ。企業の利益確保を優先する「アベノミクス」の失敗は明らかになっている。雇用と賃金を確保することが経済を立て直し、税・保険料収入を増やすことが社会保障財源の確保と医療への公的支出を増やすことにもつながる。

以上