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医療政策 総点検 安倍政権の5年間
―社会保障費抑制と給付削減―

全国保険医新聞2017年10月5日号より)

 

 経済協力開発機構(OECD)調査(14年12月)では、「所得格差の趨勢的な拡大は、経済成長を大幅に抑制している」と結論付けている。社会保障を充実することは、経済成長と社会の安定に寄与することが国際的にも明らかだ。安倍政権が社会保障費を抑制し、負担増・給付削減によって、格差と貧困を拡大してきた5年間を検証した。

 

「自立・自助」の環境整備

 「社会保障改革プログラム法」(13年12月)で、社会保障への国の責任について、「政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立の環境整備等の推進を図る」ことに限定した。
 「医療・介護総合法」(14年6月)では、医療費抑制を目的に、入院患者を抑え込み、病床削減と在宅、介護施設に患者を送るシステム作りの推進を定めた。
「医療保険改革関連法」(15年5月)で、国保の都道府県単位化、医療費目標を掲げる医療費適正化計画などを定め、「地域包括ケア強化法」(17年6月)では、介護保険の利用者負担に初めて3割を導入した。
 国が敷いたレールの上で、地方自治体に医療・介護の給付抑制を競わせる計画が、18年度から本格化する。地域住民の生活を支える基本インフラである医療、介護の崩壊が起こるおそれがある。

 

自然増を1兆円超圧縮

社会保障費自然増の圧縮

13年度

2800億円

14年度

4000億円

15年度

4700億円

16年度

1700億円

17年度

1400億円

 高齢化や医療の高度化に伴う社会保障費の自然増の抑制額は、13年度から5年間の累計が1兆4600億円に上っている(表)。16年度は診療報酬マイナス改定で1500億円を圧縮した。来年度は自然増6300億円を見込み、5000億円に圧縮するため1300億円を削減する。一方、防衛費の概算要求は5兆2551億円で、17年度当初予算から1300億円増額しているが、社会保障費の自然増の抑制額1300億円で賄う形だ。

 

あらゆる世代の負担増

 今年度予算編成の際に、▽70歳以上の高額療養費の自己負担上限引き上げ(国費224億円削減)▽後期高齢者医療制度の保険料軽減の縮小・廃止(国費187億円削減)▽65歳以上の療養病床入院の光熱水費の自己負担引き上げと対象患者を拡大(国費17億円削減)など、法律改定が不要な負担増を決めた。
 政府の「改革工程表」には、@「外来時の定額負担」を導入し、3割の法定負担に定額負担の上乗せを義務付ける(1回100円の定額負担とした場合、年間20億回の外来受診〈厚労省調査〉で2000億円の負担増)、A先発品を選んだ場合、後発品との差額を患者負担にする、B後期高齢者の患者負担を1割から2割へ引き上げる、などの項目が並んでいる。全世代で経済的な理由による受診抑制を招き、疾病の長期化や重篤化を招くことが懸念される。

以上