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医療の現場無視
―「2%半ば以上マイナス」18年改定 財務省が提案―

全国保険医新聞2017年11月15日号より)

 

 

 社会保障費の自然増を大幅に削減する政府方針の下、2018年診療報酬改定はマイナス改定の動きが強まっている。10月25日の財政制度等審議会・財政制度分科会では財務省から、診療報酬本体も含めて2%半ば以上のマイナス改定が必要との方針が示された。医療現場の実態を無視して、マイナス改定ありきの議論を進めることは問題だ。

 

 財務省は、国民負担の抑制を診療報酬引き下げの理由としている。しかし診療報酬は医療機関経営の原資であり、患者に安全・安心の医療を提供するには、必要な人件費や設備関係費を確保できる技術料の評価が不可欠だ。診療報酬引き上げを国民負担と対立させるのは、国民と医師・歯科医師の分断を狙った意図的な政策誘導ともいえる。
 財務省は、1995年を100として診療報酬本体が「賃金や物価の水準と比べて、高い水準」となっていることから、マイナス改定が必要としている。しかしこの比較方法は、どの年度を起点とするかで内容が大きく異なる。日本医師会の横倉義武会長は、アベノミクスが始まった2012年を起点とすれば16年度の診療報酬本体の水準は賃金や物価より低くなることを示し、データが「恣意的」と批判している。

 

政府の賃上げ要請と矛盾

 また、診療報酬本体引き下げは医療従事者の人件費引き下げにつながりかねず、年率3%の最低賃金引き上げを目指すとする政府の方針とも矛盾する。勤労者の賃金が伸び悩んでいる現状は、雇用の改善と賃金の引き上げで是正されるべきであり、マイナス改定の口実とすることは許されない。
 さらに財務省は、「2%半ば」の根拠を、医療費の伸びを「高齢化等」による増加の範囲にとどめ、医療の「高度化等」による分(年約1.2%)を抑えると説明している。しかし高額薬剤分を抑えれば、この伸びはもっと低くなり得るし、そもそも「高度化」分を抑制するのは、医療技術の発展を否定するものともいえる。

 

地域医療に打撃

 2002年から08年にかけて4回連続でマイナス改定が行われ、各地で医療崩壊といわれる事態を引き起こした。この事態を立て直す抜本的なプラス改定はないまま、14年は実質マイナス改定、16年は再びマイナス改定となった。
 8日に中医協に示された「第21回医療経済実態調査」では、16年度の病院の損益差額の構成比率(1施設当たり)はマイナス4.2%と、「過去3番目に悪い数値」(厚労省)となった。さらなるマイナス改定は地域医療提供体制に深刻な打撃を与え、地域医療の立て直しが困難になりかねない。
 全国保険医団体連合会は、技術料中心に10%以上の診療報酬引き上げを求めている。

以上