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『特療』の医療技術への拡大は、公的保険範囲と質の限定・縮小への道

                                 2004年12月5日
全国保険医団体連合会
政策部長 津田 光夫


中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会は12月3日、「特定療養費制度の在り方に係わる基本的方向性」を了承しました。今後、細部の検討を続けるとしているが、基本方向として示された内容は、特定療養費制度を含めた患者負担の拡大を新たに見直し、保険外負担を“合法化”するためのルールを検討するものであり、中医協での議論としては問題であることを指摘します。

第1は、特定療養費制度の中で、「将来的な保険導入の前段階のもの」か「将来的にも保険導入しないもの」かを「個別に整理していく」ことを方針化したことです。選定療養を入り口にしているが、制度の基本的な在り方として、「保険外放置型」と「保険導入期待型」の区分を持ち込むものといえます。患者、国民にとって必要な医療が、保険適用されないまま枠外に放置される恐れや、「180日超の入院」のような保険給付外しの受け皿としての役割が強化されることが危惧されます。

第2は、医療技術への特定療養費制度の適用を、現行の高度先進医療にとどまらず、「高度でないため高度先進医療の対象ともなっていないような技術」にまで拡大していくことです。実施する医療機関も限定しないとの考えが示されています。速やかに保険適用される保障がないまま、特定療養費制度に組み込まれ固定化されることになれば、公的保険給付の拡充は進まず、長期的には患者の保険外負担も軽減されないことになります。

第3は、保険適用回数制限がある医療行為を制限回数以上に行うことや人員配置について、保険上の評価の「観点等も踏まえ」た検討が必要になるとしている点です。西山前厚労省医療課長の発言と重ね合わせると、保険点数をベースに技術料差額という方向性が懸念されます。

第4に、中医協等での議論は、「『公的医療保険制度によってどのような範囲の医療を保障すべきであるか』といった問題と密接に関連する」との立場から行われるといいます。今日、医療保険の地域(都道府県単位)保険化、社会保障給付費の総額管理導入が計画されている中で、公的保険範囲と質を限定、縮小していく方向に収斂されていかないこと、及び特定療養費制度から保険適用へのルールの明確化を要求します。あわせて、医学・医療技術の進歩に対応し、『保険証1枚』で安心してかかれる公的医療保険制度を実現する立場から、真摯な議論を尽くすよう求めるものです。