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多くの国民から医療の機会を奪う財政審「建議」に道理はない

                               
  2005年6月7日
全国保険医団体連合会
副会長 住江 憲勇

                                                           財務省の財政制度等審議会は6月6日、2006年度予算に関する意見書「予算編成の基本的考え方について」(建議)を谷垣財務相に提出しました。意見書は、社会保障給付費の伸びを経済成長に見合う程度に抑制するため、高齢者医療費の抑制を最大のターゲットとし、公的医療保険がカバーする範囲の「根本に立ち返った見直し」を提言しました。

 意見書に盛り込まれた医療費抑制策は、これまで国民の努力と運動で築いてきた社会保障制度という財産を一方的に奪うものです。そもそも、今でさえ日本の医療費の水準は、国民所得比でみるとドイツ、フランスなどの6割程度しかありません。これをさらに抑制するなど道理がないものです。

 入院時の食費や居住費を保険給付から外す、高齢者の自己負担をさらに引き上げる、「少額医療費」を保険適用外にするなどの具体策は、低所得者をはじめ多くの国民から医療の機会を奪うことであり、断じて容認できるものではありません。

  日本の社会でも国民の経済格差が広がっています。所得格差を示す「ジニ係数」はこの20年間で0.4から0.5に増えています。社会保障給付費や医療費の伸びの抑制は、こうした流れを助長する許せない動きです。今、必要なことは、社会保障制度をせめてヨーロッパ諸国並みの水準に押し上げ、『保険証1枚』で安心してかかれる医療制度を実現することです。