ホーム


必要な医療・介護の提供を阻害する診療報酬・介護報酬の大幅引き下げを止め適正な診療報酬・介護報酬の引き上げを!

2005年12月19日
全国保険医団体連合会会長
 室生昇


 12月18日に政府は、2006年4月実施の診療報酬改定でマイナス3.16%(本体▲1.36%、薬価・材料価格▲1.80%)もの大幅引き下げを行うとともに、同時実施の介護報酬改定でもマイナス0.5%の大幅引き下げを行う方針を決めました。

改定率は政府予算案に盛り込まれ、今後、国会審議を経て来年春に決定するものです。全国保険医団体連合会は、これ以上の診療報酬・介護報酬の引き下げは必要な医療・介護の提供を阻害することから、これに強く反対するとともに、国会において十分な審議を行い適正な引き上げを行うよう求めるものです。

 診療報酬については、1980年代以降、世界一の医療費抑制政策が実施されてきました。その結果、1981年に比べて2003年の現金給与総額指数は136.4%、消費者物価指数は124.49%となったのに、診療報酬改定は1981年に比べて2004年でも101.56%にしかなっていません。

 日本の医療費の対GDP比は7.9%で、アメリカの5割、ドイツやフランスの7割しかなく、先進国中最低水準となっています(OECDヘルスデータ2005)。これは、欧米諸国に比べて医師看護師の配置が5分の1から2分の1しか診療報酬で評価されていない等の低医療費政策が原因で、医師や看護師等の過重労働が医療事故の要因ともなっています。

医療水準を落とさず、安全で安心な医療を提供するためには、物価や人件費のコストに見合う診療報酬の引き上げが最低限必要です。1981年以降の現金給与総額指数や消費者物価指数に合わせるならば20〜30%の診療報酬引上げが必要ですが、2006年改定では少なくとも、総枠で7%以上の診療報酬引き上げを実施すべきです。

 介護報酬については、2003年の第1回改定でマイナス2.3%もの引き下げを行い、質のよい介護の提供を困難にしました。また、今年成立した介護保険法改定では、今年10月から居住費・食費を保険から外すとともに2006年4月には要介護認定や予防給付等の改定による給付削減を行うこととしました。これによる財政影響を介護報酬に換算するとマイナス10%にもなり、2006年4月にはこれに加えてさらに0.5%ものマイナス改定を行おうとしています。

 これ以上の介護報酬引き下げは、絶対に容認できません。2006年改定では少なくとも2003年のマイナス改定を補えるよう3%以上の引き上げを行うとともに、居住費・食費の保険給付外しや要支援者に対するサービス切捨て政策についても早急に見直すべきです。

診療報酬や介護報酬は、医療従事者の待遇改善や設備更新に必要な経営の原資となるものであるとともに、患者・国民にとっては、安全性の確保がされた社会保障としての医療・介護を受ける権利と給付内容を規定するものです。患者・国民が受ける給付内容を狭め、医療・介護を受ける権利を制限することのないよう国会において、十分な議論を行うよう強く要望するものです。

 なお、相次ぐ窓口負担の引き上げによって、患者の受診が抑制されています。私たちは、診療報酬の引き上げとあわせて、@患者負担増の医療制度改革をやめ、国庫負担と企業負担を増やして、患者窓口負担を軽減すること、A必要な医療は公的医療保険で保障し、混合診療を拡大しないことを強く求めるものです。