ホーム



2006年3月6日
厚生労働大臣 川崎 二郎殿

06年4月診療報酬改定に関わる緊急改善要望


全国保険医団体連合会
副会長 川崎 美榮子


前略 下記の事項について緊急に要望いたします。

2006年4月1日実施の新点数の取扱いに関してこのまま実施されると、運用上の不適切な方法であることや診療報酬が不十分であることなどから、今回改定の1つのポイントであった患者の視点を重視して、満足してもらえるような診療を行う上で支障を来たします。たとえば、新たに医療費のわかる領収書を発行する場合に発行するだけではなくその説明をする手間も増えるのに、診察料の引き下げなどで人手の確保が危ぶまれます。

つきましては厚生労働省からお示しいただいている今回の点数改定の理念を実現するためにも、下記に掲げた事項についてご検討の上、改善してくださいますようお願いいたします。                   

草々



1,診療所の初・再診料、病院の再診料、外来診療料の引き下げは取りやめ、継続管理加算の廃止に見合う引き上げを行うこと

(理由)診察料は医師の技術料の評価ばかりでなく、他の従事者の人件費、医療機関の維持管理費などの原資として評価されている。患者に満足してもらえる医療を提供するため、十分な人手と時間を確保することは必須であり上記のような改善が必要である。なお、病院の初診料の引き上げは当然のことである。

2,在宅療養支援診療所の施設基準は、現行の寝たきり老人在宅総合診療料24時間連携体制加算JまたはKの要件と同等のものとし、また診療所に限らず病院も届出が出来るようにすること。

(理由)昼夜を問わず多様な内容の求めが多い在宅患者、とりわけ末期の患者は多大な人手と手間がかかることから、在宅療養支援診療所が算定できる診療報酬はその点の評価をしたものと思われる。現在も評価が不十分な診療報酬のもとで在宅医療を行っている医療機関が在宅療養支援診療所として、地域医療を担えるよう上記のような施設基準にしてほしい。

3、一般病棟入院基本料で正看護師40%配置に関わる減算廃止、正看護師20%配置に関わる減算廃止、平均在院日数が実質的に短縮された類型に関わる基本料については、体制が整うまで現行の点数が算定できるよう6ヶ月程度の経過措置を設けること。

(理由)施設基準の詳細が公表されるのは3月上旬であり、1ヶ月にも満たない間に必要な従事者を確保する等の施設基準を満たすのは不可能である。

4,病院と診療所の療養病床入院基本料D・Eは廃止し、医療区分1については療養病床入院基本料Cを算定できるようにすること。

(理由)20年以上も前からいわゆる「社会的入院」の問題が指摘されていたのにも関わらず、適切な施策が示されず医療も介護も医療保険の給付対象とされてきた。1994年に「療養型病床群」(現在の療養病床)が設定されても「医療」と「介護」は峻別して扱われず、医療保険の病院に長期入院の患者は入院させられてきた。介護保険施行後、介護が必要な患者は介護保険に移行させようと入院180日超患者の特定療養費化もおこなわれた。しかし介護保険で受け入れると給付費が上がりすぎる、介護保険施設のベッド数が増えすぎると整備計画数を上回ってしまい、介護保険事業計画との整合性がとれないなど行政側の理由で移行が円滑に進まなかった。そして現在も医療保険担当の保険局と介護保険担当の老健局の調整も完了していない状況である。

そうした中でいきなり、医療必要度とADL区分による報酬が示され、療養病床入院基本料D・Eに至っては、現行の診療報酬の50〜60%という老人保健施設の報酬なみの、常識では考えられない報酬である。

診療側と患者からの意見を十分聴取したうえで、患者の病態に合わせた処遇、それに基づいた入院入所先の施設整備など、長期療養患者の総合的対策の検討を先行させるべきである。

5、現在、診療所入院基本料K群4を算定している医療機関が有床診療所入院基本料1または2の届出をする場合、4月1日現在で施設基準を満たしていれば、実績期間は不要とすること。

(理由)1人以上の看護要員の確保ができれば施設基準が整うので、実績期間の必要性は低い。

6,今回新設された4大疾患リハビリテーションのほかに、@維持期、A施設基準なし、B集団療法のリハビリテーションの点数を向こう2年間は残すこと。

(理由)リハビリテーションの質に着目し、それによる評価をしていくことは間違いではないが、長年、疾患ごとに提供されるリハビリテーションの質に着目せず、療法室の広さと従事者数による診療報酬とされてきた。

それにも拘らず、維持期のリハビリの評価をまったくなくすことや、リハビリの提供体系の変更が、徹底した検討もないままに、周知徹底期間すら設けられずに実施されようとしている。それに加えリハビリテーションについては2002年に引き続き、4年後の今回2度目の大改定であり、一貫した診断のもと適切なリハビリを継続して提供することを困難にするものである。

7,生活習慣病管理料について投薬は別算定できることとすること。また、管理の質を向上させるために必要経費の評価も十分に行い、今後、診療報酬に反映させていくこと。

(理由)生活習慣病に関しては10年前から健康増進法などによる患者減少策が実施されてきたが、糖尿病患者は1997年から2002年までの5年間で250万人増加し1620万人になるなど、効果はまったく上がっていない。投薬が減少したという実績もない。

そうした中で投薬の評価を下げ点数を引き下げるとしているが、現に患者への投薬が4月から減るわけではないので点数の引き下げは整合性に欠ける。従って投薬は別算定できるようにすること。

 また管理の質を向上させるためには医師以外の指導者の確保や研修等が必要で、それにも経費がかかることからそれらの評価も十分に行い、今後診療報酬に反映させていくこと。

 

8,医療費の内容のわかる領収証について、患者から求めがあった場合のみ発行を義務付けること。

(理由)医療費の内容がわかる領収証を必要とする患者ばかりではない。必要な患者のみの発行したほうがよい理由は、@医療費の内容のわかる領収証は不要という患者が、受け取った領収証を紛失し、その結果個人情報が漏洩する事例も発生している、A月2回訪問診療をしないと算定できない在宅時医学総合管理料のような点数の場合は、説明が煩雑で、かつ患者の理解が得られない恐れがある、B小児科外来診療料のように「医学管理等」の欄に点数が示されても内容がますますわからなくなり、かえって混乱を招くことなどである。

結局、現行の診療報酬点数は医師・歯科医師の技術料や医療機関のコストのひとつひとつに対応した体系になっておらず、明解な患者への説明も不可能である。こうした前提条件の整備なしに医療費の内容を示しても混乱と医療機関への不信を生むだけである。最終目的は患者の納得を得ることあり、一律に明細付き領収証発行を義務化するということではなく、医療機関の自主的な努力により患者の納得、信頼を得られることを目指すべきである。

                              

9,一般点数と老人点数の一本化に伴い「認知症患者在宅療養指導管理料」、「入院生活リハビリテーション料」を廃止しないこと。また「老人処置料」「老人精神病棟等処置料」は廃止すること。

(理由)一般点数と老人点数の一本化に伴い、認知症患者に対する「認知症患者在宅療養指導管理料」、入院患者の生活の質を向上させるための「入院生活リハビリテーション料」などが、理由が明示されないままに廃止となっている。これらの点数は現に医療機関で行った診療を評価したもので、現に活用されており必要な報酬であるので、廃止しないこと。

また老人のみに適用すると矛盾がある「老人処置料」「老人精神病棟等処置料」は廃止すること。

10,新設された乳幼児時間外加算、乳幼児休日加算、乳幼児深夜加算は小児科外来診療料にも加算できることを明記すること。

(理由)中医協の答申は、小児科の評価を手厚くするという趣旨と思われるが、小児科外来診療料に乳幼児時間外加算、乳幼児休日加算、乳幼児深夜加算が加算できることとされており、そのとおりに実施すること。

以上