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政府税制調査会の「平成19年度税制答申」に対して

2006年12月3日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇



一、

12月1日、安倍首相の諮問機関である政府制調査会(会長・本間正明阪大教授)は、「平成19年度の税制改正に関する答申−経済活性化を目指して−」を安倍首相に提出しました。今回の政府税調の税制改正に対する答申は、減価償却制度の見直し、法人課税の実効税率の引き下げの検討など、大企業への大減税の方向を打ち出しました。

「減価償却制度」では、大規模な設備投資をしている大企業ほど、減税規模が大きくなり、その額は国税、地方税あわせて7,000億円規模にのぼると言われています。

また、法人実効税率の引き下げでは、本間正明・政府税制調査会会長は、「現在の約40パーセントから30パーセント台にもっていくかが課題」と表明しています。また、御手洗冨士夫・日本経団連会長らが中国などのアジア諸国や英国など一部欧州の国並みにすべきだとして「法人実効税率の10%程度の引き下げ」を主張しています。もしこれが実行されれば、4兆円規模の減税になるといわれています。

日本経団連は、今年9月の「07年度税制改正」で「法人税率引き下げ、研究開発減税」の促進、消費税の「早期税率引き上げ」などを要望しています。また、御手洗・同会長は、大企業の減税による減収分を含めて「財源不足は消費税の引き上げで対応する」などと述べています。

「答申」では、事業税における診療報酬の実質的非課税措置について、「税負担の公平を図る観点から、速やかに撤廃すべき」としています。政府税調は、毎回のように「税負担の公平」の名のもとに、事業税非課税の「撤廃」を打ち出していますが、事業税非課税措置は医療の極めて高い公共性からみて当然であり、存続すべきものです。

二、

いま、戦後最長の「景気回復」といわれるなかで、大企業は過去最高の利益をあげているにもかかわらず、家計消費の伸びは本格回復には程遠い底ばいを続け、過去の「景気回復」期のなかで最低の状況です。

「答申」では、「経済活性化をめざす」としていますが、その内容は大企業への減税や税負担を軽減するものです。本当の「景気回復」をはかるというのであれば、国民の家計や個人消費の底上げをはかる税制改革をおこなうべきです。今回の答申は、「財政危機」とか「社会保障の財源のため」などと、庶民には増税と社会保障切り捨てを押しつけながら、その増えた税収を大企業のために使おうというものです。

税制改革の基本は、憲法に則って応能負担原則を徹底し、現在の大企業優遇の不公平税制を改め、税負担の本来的な公平を確保するかです。

 保団連は、「医療の公共性」をまもり、医療経営を守ってゆく立場から、一貫して直接税中心、総合・累進課税(応能負担)、生活費非課税などの民主的税制の確立、消費税廃止と緊急課題として3%への引き下げ、医療へのゼロ税率の適用、納税者権利憲章の制定をはじめ、民主的税務行政を確立するために活動してきました。

 この立場から保団連は、今回の「答申」で示された国民への負担増と大企業への優遇を推進する税制改革には反対し、国民のための民主的税制の実現をめざして、運動をいっそう強めるものです。