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4回連続、4%規模の診療報酬引き下げに断固反対し、医療費総枠の拡大と診療報酬プラス改定を強く要求します

  

2007年11月8日
全国保険医団体連合会
副会長・政策部長 津田 光夫

 

 財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会は11月5日、次期2008年度診療報酬改定で、4回連続となるマイナス改定とすることで一致しました。

財務省は、薬価引き下げに上乗せして、診療報酬の本体部分だけで最大3.6%の引き下げが必要との試算を示しました。4%規模の引き下げとなれば、国庫負担で約3,200億円の削減となり、国民医療費ベースでは1兆3,000億円にものぼる大幅削減となります。

公的保険医療の内容と範囲、治療方法を決める診療報酬を4回連続で引き下げることは、医師不足や医療機関の倒産、病床削減で行き場を失う高齢者などの医療崩壊が加速し、国民に安心、安全で信頼される医療の危機を招くことになります。

 財務省が審議会に提出した試算には大きく4つの問題点があります。

第1は、診療報酬本体の引き下げの根拠とした比較対象です。医師、歯科医師、看護師など医療従事者の人件費相当となる診療報酬本体の改定率と、国家公務員の給与ベア率を同列視して比較しています。医療機関の経営者や職員の人件費相当を、年齢分布も職種も異なる公務員給与と機械的に比較し、非正規雇用が広がる中での賃金減を前提に、それと同列に医療の効率化するものです。

第2は、薬価引き下げ分を含めず診療報酬の改定率を算出していることです。薬価、治療材料等は、2000年度から4回連続のマイナス改定で、累計でマイナス5.9%になり、診療報酬本体を含めて6.7%もの大幅な引き下げが既におこなわれてきました。試算で示した「賃金・物価」のマイナス4.4%を超える低下率であることを意図的に無視しています。

第3は、国際的にみても高い薬価、医療材料・機器の引き下げに正面から取り組む姿勢にないことです。高薬価の中でも突出している発売後9年以内の新薬の薬価をドイツ並みにするだけでも2兆円の節減につながります。医療材料・機器は諸外国の価格に比べて突出していることは、厚生労働省等の調査からも明らかです。高すぎる薬価、医療材料・機器にメスを入れ、製薬企業などの高利潤構造を是正すべきです。

第4は、手術料や初診料などの技術料は、諸外国と比べて日本が低いというデータも公表されているが、試算では医療経済実態調査の速報値を恣意的に利用して引き下げを主張していることです。調査自体は、6月単月の非定点調査で、回答数が極端に少ない診療科もあり、診療報酬改定の基礎資料としては不十分な調査です。同時に今回の速報値からも、全病院の赤字額が前回調査より倍加し、医科診療所(個人・無床)、歯科診療所(個人)のいずれも、医療機関経営の指標である「収支差額」と「収支差率」がともに減少しました。徹底した努力で医業経営を成り立たせている窮状があらためて浮き彫りとなりました。

財務省方針に基づいて、これ以上診療報酬を引き下げることは、国民皆保険制度を支えている基盤を根底から揺るがすことになります。安心、安全で信頼の医療を確保するためにも、4半世紀にわたる医療費抑制策を根本から転換し、先進諸国で最低の医療費総枠の拡大、突出して高い窓口負担の軽減、大きく不足する医師の養成など、診療報酬プラス改定と医療費総枠の拡大、患者負担軽減を強く要求します。     

以上