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医師削減を決めた過去の閣議決定を無視する麻生首相の暴言に断固抗議する

2008年11月20日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇

 

 いま日本は、政府による長年の医療費抑制政策とその帰結である医師不足によって、地域医療が崩壊しつつある。とくに救急医療、産科医療、小児救急に顕著に現れている。ところが、麻生太郎首相は11月19日、全国知事会議で、地方の医師不足に関連し、「地方の病院での医者の確保の話しだが、自分で病院経営しているから言うわけじゃないけど大変だ。社会的常識がかなり欠落している人が多いんで」とのべ、地域医療を守っている医師を誹謗しただけでなく、医師不足の責任について、「責任はおたくら医者の話じゃないんですか。しかも医者の数を減らせ減らせ、多過ぎると言ったのはどなたでしったっけ」とも発言し、医師団体に責任転嫁した。二階俊博経済産業相が10日にのべた、「何よりも医者のモラルの問題だと思いますよ。忙しいだの、人が足りないだのというのは言い訳にすぎない」との暴言と軌を一にするものである。今日の深刻な医師不足を解決しようとする姿勢がまったく見えない麻生首相は行政府の長として失格と言わざるを得ない。


 そもそも、政府は1982年に医師数の抑制を閣議決定し、97年には再び「医学部定員の削減に取り組む」ことを閣議決定した。その結果、今日OECD加盟30カ国中27位で、加盟国の平均値と比べると日本の医師数は13万人も不足し、診療現場に深刻な医師不足問題を生じることになった。これは明らかな失政である。


 政府は今年になって医師の養成数を増やす方針に転換したものの、その内容はまったく不十分であり、現状の医師不足を解決できる内容ではない。就労医師数目標を最低でもOECD諸国平均値以上にするために、医学部定員を大幅に増加するとともに、毎年2200億円の社会保障費の削減を同時に止め、医療費抑制政策を転換させるべきである。