診療報酬引き上げ率「偽装」報道への厚生労働省の見解について
「後発品のある先発品の追加引き下げ」600億円は診療報酬本体に充当を
2010年2月3日
全国保険医団体連合会
会長 住江 憲勇
1月31日付毎日新聞1面に「診療報酬増を『偽装』」との記事が掲載されました。同紙だけでなく多くの専門誌が、「後発品のある先発品の追加引き下げ」で捻出される600億円(▲0.16%)が2010年4月の診療報酬改定率(0.19%)に含まれておらず、実際の医療費総枠の拡大は+0.03%(+100億円)であり、実質ゼロ改定と指摘してきました。
これらの報道に対して厚生労働省は2月1日に見解を発表し、「後発品のある先発品の追加引き下げ」による600億円が診療報酬改定率の計算に盛り込まれていないことを認めた上で、「後発医薬品の使用促進、すなわち、『先発品から後発品への置き換え』による財源は…一貫して診療報酬改定の財源とはしてこなかった」と弁明しました。
しかし、「後発品のある先発品の追加引き下げ」は、特許期間が切れるまでの新薬の高薬価を維持する「薬価維持特例」の導入試行と引き換えに実施すると言われており、「追加引き下げ」の財政影響は薬価全体の改定率に含まれるのは当然です。
また、過去の「先発品から後発品への置き換え」は、もっぱら社会保障費の2200億円削減の財源捻出のために、処方せん様式の変更等による後発医薬品の使用促進による医療費削減という手法で実施されたものです。今回実施する「後発品のある先発品の追加引き下げ」は、薬価そのものを引き下げるものであり、まったく手法が異なり、医療機関の経営に大きな影響を及ぼすものです。
さらに、見解では「後発医薬品の使用促進が進んでいない現状を是正するために実施するもの」と主張していますが、後発品のある先発品の薬価を引き下げれば、引き続き先発品を使う可能性が高く、後発品の使用促進に結びつくかも疑問です。
総枠0.19%では医療崩壊を食い止めることはできませんが、少なくとも発表した総枠0.19%の引き上げは守るべきです。
中医協では、財源不足を理由に診療所再診料の引き下げや外来管理加算の引き下げ・新たな要件の導入が議論になっています。600億円をこれに振り向けるならば、病診再診料の71点での統一や外来管理加算「5分ルール」の無条件撤廃の財源は、十分確保できます。
社会保障費2200億円削減の撤回を掲げた鳩山政権が、旧自公政権と同様の手法で医療費抑制を合理化することは、全く納得できません。
薬価引き下げによるすべての財源は、患者が受ける医療サービス向上のために使用すべきであり、600億円は診療報酬本体の引き上げに使うべきです。
以上