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海外技工を容認している平成17年通達の撤回を早急に求める
―TBSテレビ“日本に流入 中国製義歯から有害物質”放映を契機にー

2010年 2月 9日
全国保険医団体連合会
歯科代表 宇佐美 宏

 2月6日夕刻、TBS系テレビは、報道特集ネクストで“混入していた有害金属 中国製歯科技工物 輸入放任の実態に警鐘”という特集を組み、中国の技工所に委託した技工物から、我が国では発がん性や粉塵を吸引すると呼吸器障害が生じかねないという理由で使用禁止されたベリリウムが検出されたと放映しました。視聴者の多くが、国外で作製された歯科技工物(海外技工)はもとより我が国の歯科技工物の安全性の確保にまで不安をもたれたのではないでしょうか。

歯科医師3万8千人が加入する全国保険医団体連合会(保団連)歯科代表として、当該番組が放映されたのを機会に、国内技工にもふれながら、海外技工問題に対する私たちの運動と見解を明らかにします。

 入れ歯や冠せものなどの歯科医療用技工物は、咀嚼機能の回復、維持のための人工臓器として、長期に亘って口の中に装着されるものです。我が国では、保険治療か自費治療かの如何にかかわらず、歯科医療用技工物は、薬事法で認可された材料を使用し、歯科技工士法に基づいて歯科医師や国家資格である歯科技工士が基準を満たした施設で作成するなど、安全性及び質の確保が図られています。

しかし厚労省は、海外技工については、自費治療に限定していますが、材料、製作者の資格、施設基準を問うことなく、2005年9月8日付「国外で作成された補てつ物等の取り扱いについて」の歯科保健課長通知を出して、「患者に適切に説明をした上で、歯科医師の素養に基づく高度かつ専門的な判断により適切に実施されることが原則である」と、海外技工問題の責任を委託歯科医師に押しつけています。

こうした中で保団連は、アメリカ・オハイオでの中国製技工物の鉛入り事件報道を契機に、厚生労働省に対して、海外技工の実態調査を行い、安全性と質の確保を行うよう要請する一方、独自に会員歯科医療機関を対象に海外技工の緊急実態調査を実施し、2割弱の歯科医療機関しか厚労省の通知を知らないこと、5割以上の歯科医療機関が通知内容を不適切と回答していることなどを明らかにしました。
さらに通院患者を対象に海外技工患者アンケート調査も実施し、73.3%の患者さんから主治の歯科医師から説明があっても海外技工物の使用を同意しないと回答を得ました。その理由に「安全性に不安」(66.5%)、「品質に不安」(28.4%)をあげている実態も明らかにするとともに、患者調査結果を踏まえて院内掲示ポスターを発行して海外技工問題を患者さんに訴えるなどの活動をすすめてきました。
海外技工に関しては、地方議会でも取り上げられ、「歯科補てつ物等の輸入取り扱いに関する法整備を行うなど、歯科補てつ物等の品質や安全性の確保を求める」などを内容とする意見書が昨年3月現在、2県議会19市町村議会で採択されています。
さらに本年1月19日には、全国60カ所の歯科技工士養成学校の団体である全国歯科技工士養成協議会が長妻厚生労働大臣に対して、「国外において日本国の法律における無資格者によって作成され、輸出された歯科補てつ物等が日本において歯科医師の裁量(権)によって患者への装着を事実上許している現状は、このまま放置できない違法状態であると考えられます」」として海外技工問題での早急な対応を政府に要請されています。

海外技工問題がテレビ放映され、視聴者の多くが歯科技工物に不安を持ち始めている今日、保団連は、改めて、政府に海外技工を容認している平成17年通知を早急に撤回し、海外技工物の安全性と質の確保をはかるため、海外技工物についても国内技工物同様、歯科技工士法と薬事法に準じた取り扱いにするなどの措置を講じることを強く要請するものです。


以上