厚生労働大臣 長妻 昭 様
中央社会保険医療協議会委員 様
2010年4月19日
全国保険医団体連合会
病院有床診療所対策部会
部長 安藤 元博
入院患者の他医療機関受診の取り扱いに対する緊急改善要求
前略 国民医療確保に対するご尽力に敬意を表します。
さて、2010年4月実施の診療報酬改定で入院患者の他医療機関受診の取り扱いが変更されました。
改定では、これまで規定のなかった入院基本料等算定患者等についても他医療機関を受診した日の入院基本料等の基本点数を30%減額し、他医療機関では「医学管理等(診療情報提供料は除く)、在宅医療、投薬、注射(当該専門的な診療に特有な薬剤を用いた受診日の投薬又は注射に係る費用を除き、処方料、処方せん料及び外来化学療法加算を含む)及びリハビリテーション(言語聴覚療法に係る疾患別リハビリテーションを除く)に係る費用」の算定ができなくなりました。これは、他医療機関の医師の専門的な技術料を不当に削減するとともに入院患者への専門的な医療を制限するもので、断じて容認できません。
また、今回の改定では、出来高払いである入院基本料算定患者も含めて、他医療機関での投薬を「専門的な診療に特有な薬剤を用いた受診日の投薬」に制限しました。これは、医療現場の実態を無視した改定です。
患者は複数の疾病を抱えています。すべての疾病について入院医療機関のみで対応することは困難な場合もあり、他医療機関受診の制限は入院患者の症状を悪化させかねません。
また、このような規制は勤務医にさらなる負担を課すものであり、使用頻度が少ない薬剤を保有することは経営的にも大きな負担となります。そもそも入院医療機関の30%減額、70%減額の根拠が不明確であり、患者の家族が外来医療機関に入院中であることを告げずに投薬を受けるケースもあります。さらに他医療機関受診の複雑化は医療の現場に大混乱を持ち込みます。
入院患者が当該医療機関にて診療を行うことができない専門的な診療を他の医療機関で受け、当該医師による投薬をはじめとした治療を受けられることが疾病の回復を促進することは言うまでもなく、入院医療機関が必要を認めて情報提供しての他医療機関受診は基本的に制限を設けるべきではありません。
他医療機関受診の制限は4月からすでに始まっていますが、このまま放置すれば、入院患者の治療に取り返しのつかない大きな影響を与えるとともに、第一線の入院医療を受け持ってきた中小病院や有床診の存続が極めて困難になります。直ちに他医療機関受診の制限については凍結し、下記の対応を早急に図られますよう、強く要望いたします。
記
一 入院基本料等算定病棟は出来高払いであり、他医療機関が処方する薬との重複投与や重複検査等の可能性がないことから、入院基本料等算定患者に対する他医療機関受診の制限を撤廃し、入院基本料減額を行わないこと。
一 特定入院料等に包括されている点数がない場合は特定入院料等を減算せず、包括点数のあるなしにかかわらず、当該特定入院料等算定病棟で実施できない医学管理、投薬、注射、疾患別リハビリ等は他医療機関において算定できるようにすること。