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医療指導管理官による犯罪捜査のプロを指導監査で活用する
提案について 法令を遵守すべき公務員の立場を逸脱 厚労省の
責任の明確化を要求する


2010年8月8日 第7回全国保険医団体連合会理事会


法令を逸脱した提案が第二次選考に残った経過と責任を明確に

7月22日、厚生労働省は全職員を対象に実施した「政策コンテスト」の結果を発表した。「政策コンテスト」に応募のあった81件のうち、厚生労働省事務次官など幹部職員と内閣官房専門調査員による第一次選考を通過した7件が二次選考の対象となった。このうち現職の医療指導管理官による「保険医療指導監査部門の充実強化」の提案は表彰外となったものの、その内容は、犯罪捜査のプロである警察庁や警視庁から出向者を受け入れて指導監査に当たらせよ、というもので、健康保険法や行政手続法などにもとづいて行われている指導監査に、犯罪捜査の手法を持ち込むべきという、法律を無視した提案である。これは、法律を遵守すべき公務員の立場を逸脱した提案である。こうした提案が第二次選考に残ったことについての厚労大臣の責任は重大であり、保団連は、選考経過と責任を明確にすることを要求する。

指導、監査を受ける保険医を犯罪者と同列視
同医療指導管理官の提案内容であるが、「権限の相違はあるものの、悪を正し刑罰(行政上の措置)を課す点においては共通点があることから、犯罪(詐欺罪)に対するプロである警察庁や警視庁(捜査第二課=知能犯、詐欺、横領担当)からの出向者」を指導監査部門に受け入れる、というものである。そもそも、健康保険法等では、監査における調査、質問又は検査についての権限は「犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない」(第78条第2項、第7条の38第3項)と明記されている。ところが提案者は、「指導監査については、刑事事件と異なり強制捜査権はないが、事実を聴取し処分するといった点では共通」などと提案資料に記載しているように、「指導」と「監査」の区別どころか行政調査と犯罪捜査の区別までも無視するなど、指導監査の関連法令をまったく理解していないか、意識的に無視した説明を行っている。

さらに、「必要に応じ刑訴法に移行する場合があるといったような牽制効果を期待できる」としているように、全ての保険医療機関が受けるべきものとされている行政指導を「犯罪捜査」と同列視しており、刑事訴訟法に照らしても逸脱した提案を行っている。とくに「指導」は、行政手続法にもとづき「任意の協力によってのみ」実現され、なおかつ指導大綱により「診療報酬の請求等に関する事項について周知徹底させることを主眼とし、懇切丁寧に行う」とされており、処分を前提としたものではない。警察官を指導監査部門に出向させることで「職員の資質の向上を図る」とする考え方も含めて、保険医を「指導」の段階から被疑者(犯罪容疑者)扱いするものであり、このような提案をすること自体が指導監査の指揮を執る厚労省の担当者として不適格である。

指導、監査に対する厚労省の基本姿勢が問われる
保団連は、保険医の人権を無視した指導、監査が現場で横行するもとで、弁護士の帯同、録音など取り組みを進めてきた。指導大綱、監査要綱の見直しが検討される中で、こうした事態が起こったことは、厚労省の法令遵守についての基本姿勢が問われるものである。厳格な対応を改めて要求する。

以上