ホーム

 

高齢者差別の仕組みを継承する「新制度」案は
断じて認められない


2010年12月9日
全国保険医団体連合会
政策部長 三浦 清春

厚生労働省は8日、後期高齢者医療制度代わる「新制度」の最終案をまとめた。最大の問題点は、現行制度の根本問題である75歳以上の高齢者だけを別勘定にし、医療費(給付)と保険料(負担)を連動させる仕組みを、「利点はできる限り維持」するとして、「新制度」の根幹に据えることである。

第2の問題点は、この間の国民の運動によって実現させた負担軽減措置を見直し、70-74歳までの窓口負担を現在の1割から2割に倍増することや、75歳以上の低所得者の保険料軽減の追加措置を段階的に縮小するなど、高齢者の負担増方針を新たに打ち出したことである。現状でも高齢者層を中心に受診抑制が生じているが、さらに高齢者の生活を圧迫し、受診抑制に拍車をかけることになる。

第3の問題点は、現役世代の1人当たり保険料が急激に増加することである。現役世代にも負担増を迫り、世代間に対立構造を持ち込むことで、高齢者の医療費を削り込もうとするやり方は容認できるものではない。

第4の問題点は、「新制度」では、公費負担のうち最も重要な国庫負担は、現行制度より大幅に減ることになるが、地方自治体、とくに市町村は大幅な負担増となることである。

第5の問題点は、全年齢を対象とした国保の都道府県単位化を2018年度から全国一律に移行する方針を掲げたことである。都道府県に対して、国保の財政運営と「医療費適正化計画」の目標達成の両方について責任を負わせることで、「新制度」の「給付と負担」の管理と医療費抑制策の立案・実行を一体として行わせ、競わせることがねらいである。
また、都道府県単位化に向けて、市町村国保の赤字に対する一般財源投入を否定し、国保料引き上げと医療費抑制を推進するとしている。しかし、国保の財政危機打開のために必要なことは、その根本原因である市町村国保会計に対する国庫負担の削減政策を転換し、国庫負担を抜本的に増やすことである。

最終案は、後期高齢者医療制度廃止後の「新制度」創設を逆手にとって、高齢者差別の仕組みを継承するとともに、国庫負担を削減し、地方自治体と全世代の国民には負担増を求めるなど、これまで以上に給付抑制と負担増路線を強めるものである。
さらに、長年の医療費抑制策の総仕上げとして、国民皆保険制度に対する国の責任を放棄し、地方自治体に押し付け、全国民共通のナショナルミニマム保障を大幅に後退させる方向である。地域間の医療・健康格差を一層拡大することになり、住民の福祉増進を図る地方自治の在り方からも重大問題である。
このような公約違反の誹りを免れない「新制度」は断じて認めることはできない。    

以上