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薬害根絶のための検証と対策を――
薬害イレッサ訴訟の和解勧告を歓迎する

                        2011年1月13日
全国保険医団体連合会
研究部長 斉藤 みち子

 

 肺がん治療薬「イレッサ」(一般名 ゲフィチニブ)の副作用で死亡した患者の遺族らが、国と輸入販売元のアストラゼネカ社に損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁と大阪地裁は、1月7日、和解を勧告した。
勧告では、「緊急安全性情報が出された2002年10月15日までにイレッサを投与され、その副作用として間質性肺炎を発症した患者らを救済する責任がある」として、国とアストラゼネカ社の責任に言及、和解の枠組みとして、和解金の支払いと原告との誠実な協議を求めた。

裁判の中で、原告側が求めていたイレッサ承認時の添付文書について国と製薬会社の責任を認めたのは画期的である。「副作用の少ない夢の新薬」などとして2002年1月に承認申請が出されたイレッサは、異例の早さで同年7月に承認されたが、発売後、間質性肺炎で亡くなる人が半年で180人、2年半で557人にのぼった。厚労省が承認前に海外から重篤な副作用報告を受けていながら、十分なデ−タを収集しないまま承認していたことも判明している。

副作用は受任せざるを得ないとして、現在、「抗がん剤」による死亡は国の医薬品副作用被害救済制度の対象になっていない。がんが国民の死因のトップを占め3人に1人ががんで死亡する今日、救済制度のあり方を再検討する必要がある。また、原告が求めているように、「がん対策基本法」にがん患者の権利を明記し、医療体制の整備をすすめることも不可欠の課題である。

重大な副作用である間質性肺炎についての十分な注意喚起を行わず、薬害イレッサ事件を起こした国と製薬企業は、勧告を真摯に受け止め和解協議に応じるとともに、薬害根絶のための検証と対策に取り組むべきである。

以上