イレッサ訴訟 東京地裁判決について
国とアストラゼネカ社は控訴せず和解協議を
2011年3月25日
全国保険医団体連合会
研究部長 斉藤 みち子
肺がん治療薬「イレッサ」の副作用で死亡した患者の遺族3人が、国と輸入販売元のアストラゼネカ社に損害賠償を求めていた訴訟で、東京地裁は3月23日、国とアストラゼネカ社の責任を認め、2人の患者に対して1,760万円の支払いを命じる判決を言い渡した。1人については、発売3カ月後に副作用が注意喚起された後に服用しているとして請求を却下した。
判決が、抗がん剤の副作用情報の開示に関して、製薬企業だけでなく国についても、医薬品の安全性確保の責任を明らかにしたことは画期的である。アストラゼネカ社に対して、製造物責任法の「指示・警告上の欠陥」を認定するとともに、国に対しても、添付文書の副作用に関する記述について、安全性確保の観点から行政指導する責務があると指摘したことは当然である。
アストラゼネカ社は、東京、大阪両地裁の和解勧告(1/7)、大阪地裁判決(2/25)、に続き、今回の東京地裁判決で3度目の法的責任が指摘されたことになる。国についても、和解勧告での救済責任の指摘に続いて法的責任が認定され、大阪地裁判決でも行政指導の対応の不十分さが問われている。
国とアストラゼネカ社は、今回の判決を真摯に受け止め、被害者救済と薬害防止などイレッサ問題の全面解決に向けて、控訴せず、原告との和解協議に入るべきである。同時に、原告が求めているように、がん患者の救済制度の創設を含めた医療体制の整備をすすめることも不可欠、喫緊の課題である。