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国民に給付削減と消費増税を一体で迫る
「社会保障改革案」に断固反対する

2011年6月6日
全国保険医団体連合会
政策部長 三浦 清春

 

政府の「社会保障改革に関する集中検討会議」が2日決定した「社会保障改革案」の最大の問題点は、これまで以上に給付削減と国民負担増を求め、国の責任を大幅後退させていることである。

医療だけでも▽初・再診時に患者負担と別に「受診時定額負担」を導入▽市販類似薬の患者負担引き上げ▽70〜74歳の2割負担▽外来受診「適正化」の名で外来患者数の5%減などを打ち出した。さらに受診が抑制され、重篤化させかねないことが危惧される。
とくに、かぜ薬や湿布薬などの市販類似薬の患者負担引き上げは、疾病の違いや使用する薬によって保険給付に差を付けることであり、かぜなどを「軽い病気」と規定し、公的保険は適用しないという考え方に基づく「保険免責制度」につながるものである。
また、「受診時定額負担」を導入することで患者負担は3割を超える。形を変えた「保険免責制度」である。2002年の改定健康保険法の附則2条には、保険給付は「将来にわたり100分の70を維持する」と明記されており、法律を形骸化させる重大問題である。しかも、制度が一旦導入されれば、負担額の引き上げが容易に行われるようになることは、これまでの歴史からも明らかである。
国民の受療権を制限し、「疾病の自己責任」と「受益者負担」主義を強める患者負担の引き上げと「保険免責制度」の導入に断固反対する。

第2の問題点は、国民の要求と運動を一定反映し、高額療養費制度の拡充や国保料、介護保険料の軽減強化、低所得者の年金加算などの施策が盛り込まれたが、国庫負担を増やさない「財政中立」方針によって、新たに生まれる財源の規模に応じるとしていることである。 
とりわけ、高額療養費制度の拡充策が、「受診時定額負担」導入による財源規模に連動するということは、今後、長期・高額医療の患者の負担軽減に必要な財源が増加すれば、一般の患者にさらに負担増を迫ることになる。「自助を国民相互の共助」で支えることを基本にした社会保障を強要し、国民の中に分断構造を持ち込もうとすることは断じて容認できるものではない。

第3の問題点は、社会保障と税の「共通番号制」の導入を前提にしていることである。「共通番号制」は、社会保障給付と納税・納付に係わる個人データを行政が「名寄せ・突合」ができるシステムであり、国民のあらゆる情報を結びつけて行政や民間が利用する「国民ID制度」の基盤と位置付けられている。社会保険制度の否定につながる「負担に見合う給付」を狙い、「社会保障個人会計」創設の基盤ともなる「共通番号制」の導入を認めることはできない。

第4の問題点は、消費税の社会保障目的税化と2015年までに消費税を10%に引き上げることを明記したことである。社会保障には所得の再分配により不公平を正す機能が必要であり、その原則に反する消費税は、憲法25条、13条、14条に反し、例えそれが社会保障目的税とされたとしても財源には相応しくない。社会保障改革と財源の関係は、目指すべき社会保障の方向性が、財源のあり方を主導するものであり、その逆であってはならない。

保団連は、政府、厚労省が「一体改革」の議論を抜本的に見直し、憲法25条を基本に国民の生命と生活を最優先する新たな社会保障ビジョンの策定を、国民的な議論のもとで進めることを強く求めるものである。

以上