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2011年7月28日

内閣総理大臣     菅  直人様
東京電力株式会社社長 西澤 俊夫様

福島第一原子力発電所の放射線被害に関する要望書

全国保険医団体連合会
会長     住江 憲勇
非核平和部長 永瀬  勉


 福島第一原子力発電所の事故は、「安全神話」に加え、廃炉によって新成長戦略の生産体制にひびが入ることを恐れた政府と、廃炉による直接の欠損と株主代表訴訟を恐れた東京電力の初期対応の遅れによって、水素爆発とメルトダウン、メルトスル―を起こした人災であった。事故を軽く見せようとデータの発表を遅らせたため、避難指示が遅れ、飯舘村をはじめ多くの国民に不必要な被曝をさせた。そして9万人が避難生活を送っている。

 食品の汚染は、福島県の原乳、茨城県のホウレンソウに始まり、東京都の水道水、群馬産の野菜、静岡産の茶葉、茨城沖のキビナゴと広がった。原発から150キロ離れた所の稲わらを食べた肉牛まで汚染し全国に出回った。出荷停止や風評被害で生産者や関係者に多大な被害が及んでいる。国民はこれらによる内部被曝を心配している。

 放射性ヨウ素、セシウムだけでなく、1.7キロの大熊町内の土壌からプルトニウムが検出され、30キロ圏外の土壌や植物、沖合3キロの海底からストロンチウムも検出されている。空中や海にもいまだに放射性物質が放出されていて、事故から4カ月たっても収束の目途がたっていない。ガンマ線による外部被曝からの急性症状だけに限定して、「直ちに健康に影響はない」と繰り返し喧伝されたが、これらの放射性物質は体内に入るとガンマ線以外にベータ線やアルファ線を出し、持続的に長期間内部被曝を起こす。

 東京電力は7月7日、急遽引き上げられた被爆許容限度の250ミリシーベルトを超えたと思われる9人の作業員うち、確定した3人の外部被曝と内部被曝のデータを公表した。それによると内部被曝がほぼ9割を占めていて、その比率の高さに驚いた。内部被曝のデータはホールボディカウンターによるものでガンマ線しか測定されていない。それにベータ線とアルファ線からの被曝が加わることになる。

 文部科学省は、4月19日、学校等の屋外活動制限値を毎時3.8マイクロシーベルト、年間20ミリシーベルトと福島県に通知した。これに対して各方面から厳しい批判が起こり、5月27日、当面、年間1ミリシーベルト以下をめざすと改めた。しかし、政府は、緊急時として、現場作業員と避難指示を出す地域住民に対する年間被曝に安全基準を決めたが、大人も子どもも年間20ミリシーベルトとしている。子どもは大人に比べ放射線に対する感受性が高く、一般の大人が法律で許容されている被曝量の年間1ミリシーベルトからするとかなりの被曝を受けることになる。国際放射線防護委員会も晩発性障害については「しきい値」がないと言っている。

 第2の福島を2度と起こさないためにも、原発ゼロをめざして、再生可能エネルギーへの政策転換をはかるべきである。当面、以下のことを要望する。

  1. 国民の内部被曝の不安に応え、「正しく怖がる」ための正確な情報公開を徹底し、空中だけでなく土壌、農産物、水産物等、きめ細かな測定・調査をし、汚染状況とそれに対する対処法を迅速に公表すること。

  2. 県外移住者を含む福島県民と原発労働者をはじめ、放射線障害を受けた全ての国民の健康と生活について、生涯にわたって責任をもつこと。

  3. 成長過程にあり、被曝の影響を受けやすい子どもの被曝量を少なくするため、子どもの生活空間の被害を最小にするための対策を取ること。

以上