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口から見える格差と貧困 10.30歯科医療の危機打開決起集会決議


「健康は健口からはじまる」――口の健康を維持することが、糖尿病の管理をはじめ、高血圧症や動脈硬化、誤燕性肺炎、認知症の予防等、全身の健康に深い関わりを持っていることが様々な研究で明らかになっています。甚大な被害をもたらした東日本大震災の歯科医療支援でも、歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士等が参加し、「命を守る総合的なケア」の一環として口腔ケアが行われ、その重要性があらためて認識されました。
 しかし、昨年保団連が実施した調査でも明らかなように、経済的理由で治療中断・中止が歯科受診で強くあらわれており、今日の「格差と貧困」社会のなかで、多くの患者・国民が経済的な理由で歯科治療を中断・中止する状況が増えています。さらに、この間のマスコミ報道でも「子どもたちに忍び寄る口腔崩壊」、「歯医者に行けない子どもたち―むし歯急増の影に経済格差」の特集番組が組まれる等、子どもの口腔健康の実態が詳細に報じられる状況が生まれています。
 このように、子どもからお年よりまで経済的理由による治療中断・中止で「口腔崩壊」という深刻な事態が広がっています。国民皆保険制度のわが国で、歯科保険医療を国民が等しく享受することができない異常な状態が進行しています。
 これら深刻な事態を招いたのは、窓口負担の高さに加え、技術料の長期据え置き、新規技術・材料の保険導入の遅れ等、歴代政府の歯科保険医療軽視政策に原因があることは明白です。
  そのなかで、歯科医療供給側も大変な状況におかれています。マスコミでも「ワーキング・プア歯科医」という言葉が定着しており、2011年度の私立歯科大学10校で定員割れとなる等、将来の歯科医師確保と歯科医療の質の低下が憂慮されます。
 歯科技工士も20代の歯科技工士の8割が未就業、歯科技工士学校の入学者が定員の7割にとどまる等、国内での将来の歯科技工物確保が危ぶまれる事態に至っています。
 さらに歯科衛生士養成学校でも定員割れが続いています。
    今こそ「お金の心配のいらない『保険で良い歯科医療を』」という要求が、患者・国民、歯科医療従事者共通の切実な願いとなっています。
 現在、私たちが取り組んでいる「保険で良い歯科医療」を求める請願署名は20万筆を超え、「保険で良い歯科医療の実現を求める」意見書は35都道府県の11道県議会534市町村議会で採択されています(11年10月現在。前回の09年10月は24都道府県の6県議会395市町村議会)。さらに「保険で良い歯科医療を」各県連絡会も、この2年間で大阪、大分で結成され、7都県に広がっています。にもかかわらず、政府が、「社会保障・税の一体改革」の名のもとに、外来受診時定額負担や70〜74歳の窓口での2割負担、消費税増税等を計画しており、私たちは国民に一層の負担増を強いるこれらの施策には断じて反対です。
 私たちは、政府が住民本意の震災復興に直ちに取り組むとともに、2012年度診療・介護報酬改定の引き上げをはじめ「保険で良い歯科医療」の実現をめざして、多くの国民や医療従事者と力を合わせてその実現のため一層奮闘します。

  1、安心して歯科治療が受けられるように窓口負担を大幅に軽減させよう。
  2、健康保険で歯科治療が受けられるよう、保険の効く範囲を広げよう。
  3、保険医の人権を無視し、患者の療養権を奪う指導、監査を抜本的に改善させよう。
  4、東日本大震災の復旧・復興で大切な歯科治療を再建しよう。
  5、「社会保障・税一体改革」案、TPPへの参加は阻止しよう。
 以上、決議します。

2011年10月30日 口から見える格差と貧困 10.30歯科医療の危機打開決起集会