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人権制限につながる「新型インフルエンザ等対策特措法案」は
拙速な立法化ではなく国民的な議論と合意形成を


2012年3月30日
全国保険医団体連合会
政策部長 三浦 清春

 新型インフルエンザ等対策特別措置法案が3月9日、国会に提出され、衆議院内閣委員会で28日、わずか5時間という拙速な審議で採決を行い、賛成多数で可決された。

 法案は、「新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命及び健康を保護」することを目的として、国、地方自治体、事業者及び国民の責務、政府・都道府県・市町村の各行動計画の作成、指定公共機関等の業務計画などが定められている。
 第5条で、「国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は当該新型インフルエンザ等対策を実施するため必要最小限のものでなければならない」と規定されているが、各条項には広範囲にわたる国民の権利制限が盛り込まれている。

 医療関係者に対しては、厚生労働大臣及び都道府県知事からの要請に応じないときは、「その場所、期間、その他必要な事項」を書面で指示するとされている。罰則は設けられていないが、強制的な業務従事を定めている。このような手法ではなく、医療関係者が地域・職域の実態を踏まえ、その専門性を生かした判断及び行動が可能となる対策及び体制とすべきである。強制的な業務従事によって被害を受けた医療関係者への補償も行うべきである。
 さらに法案は、▽臨時の医療施設を開設するための土地の強制使用▽検疫のための病院・診療所等の強制使用▽特定物資の収用・保管命令▽催物開催や施設使用の制限▽特定物資を隠匿・損壊・廃棄・搬出した者は6カ月以下の懲役―など人権制限につながる内容が盛り込まれている。

 今年1月、パブリックコメントのときに公表された文書はわずか2ページであったが、法案では1条から78条、付則まである膨大な量となっている。しかも、厚労省や内閣官房・関係省庁会議での議論もまったく不足していると言わざるを得ない。
 人権制限を適用する要件や運用方法が極めてあいまいで、国民的な議論や合意形成も尽くされていないまま拙速に立法化するのではなく、国民の理解と合意に基づく法制化を行うべきである。

以上