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番号の利用拡大を強化 「社会保障・税番号」法案国会に提出 

 

政府は3月1日、国内居住者全員に番号を割り振り、社会保障、税、災害対策の情報を一元的に管理する「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案」(「社会保障・税番号」法案)を国会に提出した。安倍内閣は、3月中の衆議院通過をねらっている。
政府の計画によると、2015年度中に全国民と中長期滞在の外国人に対し、それぞれの識別番号が通知され、16年1月から顔写真付き個人番号カード(ICカード)の交付と、行政機関での利用開始が予定されている。
「社会保障・税番号」は、当初は納税や年金、健康保険の保険料納付・受け取りなど、さまざまな行政からの給付手続きで利用され、複数の役所に分かれていた個人情報が引き出されて照合される。法人・団体にも識別番号が付けられる。
システム構築の費用は3000億円とされ、ランニングコストも毎年100億円単位でかかり、国民が新たに負担し続けることになる。
法案は「費用対効果」を強調し、法施行3年を目途に、個人番号の利用拡大について検討するとしている。医療情報への適用や民間企業による活用など、「なし崩しで利用範囲が拡大することは問題だ」(3月5日毎日新聞『社説』)と批判の声が上がっている。
法案附則では、監督機関として設置される「特定個人情報保護委員会」の権限強化を、施行後1年をめどに検討するとしているが、「権限強化は利用範囲の拡大を図る隠れみのだ」(坂本団弁護士 2月23日毎日新聞)と指摘されている。
番号の利用拡大という法案の根幹に関わる内容を、国民に具体的に説明することなく追加することは許されない。

医療分野では、当面は「保険料の徴収事務」、「保険給付の支給」が利用範囲とされている。
前政権がまとめた「社会保障・税番号大綱」(2011年6月)では、医療分野等の特に機微性の高い医療情報等は、個人情報保護法又は番号法の特別法として整備するとアナウンスされていた。厚労省内のワーキンググループで検討が進められ、2012年9月には報告書がまとめられた。
共通番号とは連携しない前提にもかかわらず、「医療等ID(仮称)」や「医療等情報中継DB(仮称)」の導入を提案するなど、共通番号のネットワークシステムとの境界線が曖昧であったが、特別法で対応することが基本方針とされていた。しかし、今回の法案のロードマップからは、特別法での対応すら削除されていることは重大問題である。
顔写真付き個人番号カードが、被保険者証の代替として利用が進めば、レセプトコンピュータや電子カルテ等で管理している患者の診療歴などの医療情報は、漏洩リスクが高まる。日本医師会も、医療に関係する個人情報保護の環境整備がされない限りは反対との立場だ。
特別法等で対応するとしていた医療等の個人情報保護の検討を棚上げにしたまま、患者の身体や健康に係わる極めて秘匿性の高い個人情報を漏洩の危険にさらすおそれがある。

法案の基本理念では、「社会保障制度、税制その他の行政分野における給付と負担の適切な関係の維持に資すること」と示されている。「社会保障・税番号」が、国民1人ひとりの社会保障給付と負担を明らかにすることで、受診抑制等の管理医療をはじめ、社会保障給付の抑制に利用されるインフラとなる危険性がある。
日本弁護士連合会は「会長声明」(3月7日)で、プライバシー侵害など重大なリスクがより高度化している法案は、将来に重大な禍根を残すとして廃案を求めている。個人情報の流出や、なりすまし犯罪が懸念され、問題点が多すぎる法案を拙速な審議で成立させてはならない。

以上